中小企業より大企業に良い人材が集まるのはある程度仕方がないことかもしれませんが、中小企業には中小企業にしか出せない良さがあり、それを魅力と考えて中小企業を選ぶ求職者もいます。
そこで今回は中小企業の採用の悩みとそれに紐づく課題を洗い出し、人材募集を成功に導くためのポイントを解説します。
中小企業の採用の悩み
中小企業の採用の悩みの一番は、最適な人材が集まるか集まらないかではないでしょうか。
いくら募集しても集まらない、それは候補者が中小企業に魅力を感じないからです。
魅力ある成長している企業であれば、大企業でなくても優秀な人は集まります。
しかし、中小企業の魅力や成長戦略をわかってもらえない、伝え方がわからない、良い人材が入社してもすぐやめてしまう。
採用担当する人材がなかなか育たないなど悩みは尽きません。
中小企業と大企業の採用方法の違い
中小企業と大企業の採用方法の違いは基本的にありません。
大企業だからできること、中小企業だからできないというものは原則ないはずです。
しかし規模が違うということで優位な点と不利な点が発生するものを比べてみました。
<新卒採用の場合>
採用方法 | 中小企業 | 大企業 |
①大学・高校の就職課 | 不利 | 有利 |
②就職サイト | 不利 | 有利 |
③企業別の就職説明会 | 不利 | 有利 |
まず新卒の採用の場合、中小企業は明らかに不利です。
就職を経験したことがない学生は、当然ながら社会経験も知識もありません。
自分のイメージで決める場合が多いです。
大企業の名前は当然知っていていても中小企業の名前は知りません。
売り上げ高など大企業は想像もできないような金額、社員数も何千〜何万人といて輝いて見えるのかもしれません。
そんな輝くイメージはどのように作りあげられているかというと、インターネットからの情報や口コミ、大学や高校の先生や先輩、親や親戚、友人などでしょう。
その情報は保守的な面もあり、安定的な大企業優位の情報に偏ります。
ひと昔前の買い手市場であれば、少し変わりますが基本的に大企業優位は揺るぎません。
<中途採用の場合>
採用方法 | 中小企業 | 大企業 |
①人材紹介 | どちらでもない | 有利 |
②就職サイト | どちらでもない | 有利 |
③ヘッドハンティング | どちらでもない | 有利 |
中途採用の場合は少し変わります。
すでに社会人を経験していて、ある程度のキャリアもある方もいます。
会社とはどういうものか多かれ少なかれ多かれ少なかれわかっているため、「大企業=すごい企業、中小企業=ダメな企業」ということもイメージとしてはほぼありません。
中小企業の良さをわかってもらえる可能性はあります。
中小企業の採用の課題
真正面から大手企業と競うような採用方法ではいけません。
ここでは大企業と比較し、課題をまとめてみました。
課題 | 中小企業 | 大企業 |
①給与 | 低い | 高い |
②知名度 | 低い | 高い |
③安定感 | 低い | 高い |
④福利厚生 | 特色を出せる | 充実 |
⑤経営陣との近さ | 近い | 遠い |
⑥仕事のやりがい | 特色を出せる | 分業化されている |
中小企業の採用の成功ポイント
①給与で競わない
中小企業が大企業と給与面で競ってはいけません。大企業は給与水準が高いので、そこでは勝負になりません。
しかし、中小企業は業績好調であれば、母体が小さいので、社員へ還元することも容易です。規模が小さいということは、社員への臨時報酬が出しやすいこともあります。
大企業でも業績不振ということは多々あります。
母体が大きいため、長い期間リストラや、賃金抑制などを行うこともあります。
少しずつ給与が上がる、成果を出した社員にはすぐに給与として繁栄できるなど、大企業にはない部分をPRしましょう。
②知名度で競わない
大企業に比べ、中小企業は知名度が低いため、そこでは勝負になりません。
しかし、「この業界の中では有名である、パイオニアである」というPRはある程度効果的で、強みを持った事業のアピールは中小企業にとって大切なポイントです。
③安定感
中小企業でも歴史のある会社はありますが、その場合は、同族経営のケースも多く歴史で勝負しない方がいいです。
また、資本金や会社の規模が違うので、そこでも勝負になりません。
大企業は中くらいの事業の集合体であることが多く、全体を合わせると規模が大きいといえます。
大企業と比較するのであれば、その一つの事業を分解し、大企業と比較すると規模感や安定感も競える部分も出てくるでしょう。
大企業=安定ということはなく、中小企業で規模は小さいながらも、健全な経営、他社にはない強みをPR出来れば、候補者にも響きます。
④福利厚生
大企業には、社員に対して充実した福利厚生があります。
しかし、大企業は人数が多いため、全員にいきわたらせるため、福利厚生は幅が広く浅いものがほとんどです。
幅が広いというのは、一見よく見えますが、自分にとって使えない福利厚生であれば、それは社員にとってあまり意味がありません。
その点、中小企業は、社員数が少ないので、社員の要望を聞いて反映することができます。
大企業で要望を聞き始めると、制限がなくなり、収集がつかなくなります。
少ない人数だからこそ、きめ細やかな社員へのフォローができるはずです。
福利厚生は金額ではなく、どれだけ企業が社員のことを考えているか?これに尽きるのです。
例えば、女性の離職率が多い中小企業であれば、徹底的に育児を応援するような福利厚生を考えたPRはいかがでしょうか。
結婚をして妊娠や出産する女性は男性よりも仕事に携わる期間が限定され、育児の負担も大きいです。
その育児負担に対して寄り添ったサポートをする。
さらに補充のための採用となれば、さらに時間もコストもかかります。
男性の育児休暇を義務化するなど、さまざまな課題が発生するかもしれませんが、中小企業は柔軟性があり、変えることにそこまで時間もかかりません。
社内で福利厚生を考える分科会などを開き、社員の不満をヒアリングを行ったり、社員にとっての働きやすさを議論する時間を設けるのもいいかもしれません。
福利厚生を充実させれば、社員のモチベーションアップに繋がり、離職率も低くできます。
この部分をしっかり候補者につたえることが、採用率UPに大きくつながります。
⑤経営陣との近さ
何千、何万人も社員がいる大企業では取締役や役員と会うことすらかなわないでしょう。
大企業であればいくつもの事業部があり、その事業部の規模だけで中小企業の何倍もの規模であることもあります。
大企業は1つの事業を行っていることはあまりなく、複数の事業の集合体であることが多いため、社員は経営陣に会うこと、直接話を聞くことなどはほぼないと言えます。
事業部長が社長のような働きをしていて、その事業もいくつも分かれていて、社員数も多く、別事業部にいる社員のことを見ることも知ることもないことが多いです。
逆に中小企業であることとはすなわち経営陣との近さ、それは社員に会社で働く意味をしっかり伝えることができます。
経営陣の考え方、この会社がこれからどうやって会社を運営していくか、肌で感じることができます。大企業に在籍していたら会社の本当の状況を知る由もありません。
働く上で自分がしている業務がこの会社にどのような影響があり、どのように貢献できるか、中小企業であれば、自分の仕事が会社に大きく影響することもあります。
経営陣と近く接することができれば、直接色々なことを尋ねることもチャンスはあるでしょう。
この部分は中小企業にあって、大企業にはないことをしっかりPRするべきでしょう。
そうすることでより良い候補者をつかむことができます。
⑥仕事のやりがい
大企業の仕事は、悪く言えば分業制、よく言えば効率よく仕事をしていると言えます。
自分の仕事が会社にどのような影響を与えているか?こういったことはわからないことも多くあります。
大企業であれば人材も豊富で社員が1〜2名抜けたところで何の問題もないでしょう。
大きな仕事をすることはあるでしょうが、自分で何かするということよりも、与えられた仕事をこなせば問題はありません。
仕事のやりがいという点でいうと、自分のやったことが会社にどういう影響を与えたのか?ということもわかりにくいと思います。
中小企業であれば規模感は大企業とは違うと思いますが、自分のしている仕事がどのように会社に影響を及ぼしているか、わかりやすいです。
自分が良い成果を出せば、すぐに効果として現れます。
良い成果が出ないときも同じですが、自分が何をこの会社でしているのか?そこに繋がるゴールも見えやすいですし、やる気を持って一生懸命頑張り、成果が出ると自分の携わった仕事の達成感を大いに感じることができます。
仕事をする上でやりがいのない仕事だとつまらなく感じてしまうこともあるでしょう。
自分の仕事が会社にどれだけ影響を与えるか、それを中小企業は社員に見せることができるのです。
これは本当に中小企業、大企業の大きな差です。
この部分を候補者にPRできる企業は、良い人材が集まります。
<まとめ>
中小企業は、日々人材不足に悩まされており、良い人材は大企業にとられていると思われているかもしれません。
しかし、近年大企業=安定という神話は崩れ始め、大企業であっても外資からの買収、事業の撤退なども頻繁に行われており、必ずしも大企業=安泰というようなイメージも今後は薄れていくでしょう。
中小企業だからといって、諦めるのでなく、自社の強み、社員をどのように教育していくか、会社の方針を経営者が直に採用者に伝えられるメリットは大企業にはないです。
人生すべてとは言いませんが最低でも数年間、一日のうち半分近くの時間を会社に費やすことは変わりません。
会社の名前が有名で大企業であるから働くということより、いかに自分が会社に貢献できるか、やりがいをどう発揮できるかを近年の候補者は見ています。
中小企業の経営者の方が、候補者の方に企業のこと、将来のこと、社員と一丸となって夢を追いかけていきたい、みんなで報酬を分け合おう、と語り掛けることができれば、候補者もこんな会社で働いてみたい、自分がこの会社で何ができるか挑戦してみたいと思うはずです。
大企業にはない、参画意識を持たせることができる中小企業は、魅力あふれています。
経営陣が情熱をもって訴えかけ、入社してがっかりされないためにも、社内の体制も整えておく必要はあります。
中小企業は規模が小さいだけに、細かいところがよく見えます。
逆に言うと、小さいので変化させることも大企業に比べて容易です。
候補者にも会社を変えることができる、この会社はあなたの活躍次第で大きくできる、あなたは一つの駒ではなく、大きな車輪なのだ、ということを説明し、活躍できる体制を整えれば、おのずと良い人材が集まります。
中小企業の採用の悩みを解決する方法は、どれだけ特色を出せるかです。
大企業との比較ばかりしては、良いところが出てきません。
大企業ではないが、仕事のやりがいは負けない、社員のことは大切な家族であることをPRして、情熱をもって採用活動に取り組んでください。
そうすれば、良い人材は必ずあなたの会社のことを考えてくれます!
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