企業における三大経営資源は、ヒト、モノ、カネと言われています。三大資産の1つである「人」をどのように集め、活用していくのかは、企業が発展するため大切なポイントです。
採用活動は、企業にとって大きな資源となりうる人材を迎える重要な活動であり、失敗しないための綿密な計画と準備が必要になってきます。
今回は、採用活動における計画の立て方や準備についてご紹介致します。
1 採用計画とは採用活動のガイドライン
採用計画とは、事業計画や経営戦略を基にどのような流れで採用活動を行うのか、プロセスやガイドラインを表したものです。
「いつ、何人、どのような人材を、どのような方法で」採用していくのか、スケジュールや採用方法やプラン採用後の配置場所な配置人数など、具体的な流れを決めていきます。
2 採用計画が必要な理由
採用活動は、事業計画の目標達成のため、必要な人材を決定する活動ですから、採用活動を正しく行うためには、事業活動や経営戦略に合わせ計画を立てる必要があります。
ただ単に人を集めれば良いのではなく、企業発展のための労働力となる人を雇わなければ、意味のある採用活動にはなりません。
それには、企業の事業展開や経営方針などを土台として、採用方法や面接回数、採用基準や求める人物像などはもちろんのこと、競合他社の情報や採用市場の動向、採用方法のトレンドなどの情報収集などの準備をしっかりと行う必要があります。
また計画や準備をしっかりと行うことは、活動終了後に内容を振り返る際にも役立ち、今後の採用戦略にも役立ちます。
3、採用計画の準備
採用計画を成功させるには、しっかりとした準備が欠かせません。職場内部の状況を知る事と、外部の市場動向と合わせて準備していきましょう。
① 次年度の事業計画を知る
上でお伝えしました通り、採用計画を立てる理由は、事業を行う上で必要な人材を集めるためです。
コストを抑え、効率的に事業を遂行していくには、どのような人材を何人配置すれば良いのかあらかじめ計画を立てなければなりません。
次年度の採用計画を立てるには、その年の事業計画を知る必要があります。会社の事業計画の進行内容により、必要とする人物像や人数が決まってくるからです。
事業拡大で実店舗を増やすなら、コニュミケーション能力が高い販売員が必要になりますし、オンライン化を勧めたいのであれば、IT関連の技術者が必要となるでしょう。
採用計画を立てる時は、まず次年度の事業計画をしっかりと理解しておきましょう。
② 現場サイドの意向を探る
採用計画を立てる上で、現場サイドの意向を抑えておくことも大切な要素です。
では、現場サイドとの意向を聞かずに採用計画を立ててしまうと、どのような問題が起こるのでしょうか。
それは、せっかく人を採用しても、部署によって労働力の過不足が発生してしまう点です。
業務が増加し、業務内容に見合った人が増えなければ労働力にはならず、一部の社員の作業量が増え、残業や休日労働と言った長時間労働につながります。
長時間労働が続けば、能力を持つ社員が疲弊し、生産性は下がります。
では、過剰配置だった場合はと言いますと、人数が多くても、適正な能力を持つ人材が配置されなければ、人が配置されても労働力にはなりませんし、コスト面で問題となります。
実際に働くのは現場ですので、現場ではどのような人材をどのくらい必要としているのか、現場とのヒアリングも忘れてはいけません。
③ 採用マーケット情報を集める
事業計画や現場の意見といった社内状況の確認に続いて、社外の情報にもアンテナを張りましょう。
まずは採用市場のトレンド情報を集めます。
求職者はどのような職種に応募しているのか、業界全体の人気度、景気の動向や世界経済の動向など、採用マーケットや経済状況についての情報を収集します。
採用活動のWEB化は進んでおり、2023年度採用活動の動向は2020年より続くコロナ禍の影響で、オンラインが主流となりつつあります。
ちなみに株式会社リクルートキャリアが発表した、採用活動の振り返り調査データによりますと、採用活動のオンラインを導入している企業は6割ほどで、そのうち約4割の企業はコロナ終息後もオンラインによる採用活動を継続すると回答しています。
また株式会社学情が出したWEBセミナーやWEB面接に関するアンケートによりますと、学生側も、9割を超える学生がWEBセミナーやWEB面接に参加したいと考えていることが分かりました。
理由としては、感染対策の他、就活以外の予定とがしやすい、移動時間の短縮や交通費の節約などが挙げられています。
このように、学生や採用市場について情報を集め、どのように採用活動を行えば、自社に適正な活動が行える情報を集める必要があります。
④ 採用競合の動向を知る
ハローワークにおける令和4年度3月度の有効求人倍率は、1.22倍で前月比0.01ポイント上昇していました。
2020年頃コロナ禍にて一旦落ち込んだ有効求人倍率は、じわじわとですが、上昇傾向にあります。
特に製造業は22%増、情報通信業は16.9%増となっており、有能な人材の獲得するために、採用合戦は激しさを増すでしょう。
他の競合他社を抑えて有能な人材を採用へ導くには、全体の採用市場を把握するとともに、競合他社の情報も抑えておかなければなりません。
競争他社の情報を集める時は、同業種だけではなく、地域内、企業規模でも他社の採用状況を調べましょう。
給与や待遇、福利厚生やリモートワーク導入、企業風土、事業展開などを自社と比較し、他社との差別化を図ります。
4 採用計画の効果的な立て方
事業計画の把握や自社の職場環境、市場調査といった社内外における準備のあとは、実際に採用計画を立てていきましょう。
ここでは、上記準備したことを踏まえ、効果的な採用計画の立て方をご紹介致します。
① 採用計画の明確化
事業計画に沿って、どのような人材をどのくらい必要とするのか、採用計画の目標を明らかにします。
ここで軸となるのが、希望する人材を何人採用し、どこに配置するのかまで具体的に表す事です。
その後、欲しい人材を確保するための母集団を形成するための方法、スケジュールや活動費用、合否の基準や担当者の役割などを決めていきます。
事業計画を理解し、採用計画の目標を明らかにしないと、その後の計画に支障が出やすいので、しっかり行うようしましょう。
② 採用スケジュールを立てる
採用ステップの流れ
採用計画の目標が決まったら、採用スケジュールを立てていきます。採用活動は主に「募集」「選考」「内定」があります。
新卒の場合、入社日は4月1日であることが一般的です。そのため入社日に合わせて「内定」を決め、過去の実績を見ながら逆算して「応募」や「選考」のスケジュールを立てます。
まず採用活動のスタートである募集の時点で、募集する業種や採用人数により、スケジュール調整をします。
人気職種の場合、募集を手広くしてしまうと、その後の選考に時間が掛かり、スケジュールが詰まってしまいます。
反対に立地条件が厳しい、人気のない職種などの理由で人が集まらなければ、業務に必要な人材が確保できなくなるリスクがあるため、早くから募集をスタートする、手広く募集を行うなどの対応が必要になるでしょう。
このように職種や条件により、採用活動の項目毎に掛ける時間を決め、スケジュールを立てて行きます。
③ 採用ターゲットを絞る
募集を掛ける際、求める人材や希望する人物像など、求める人材のターゲット像はしっかりと絞られているでしょうか。
採用ターゲットがあいまいですと、選考時に何を基準に選んでいいのか担当者によりバラつきが生じてしまいます。
企業が求職者に求める項目の中で、全体の約6割~8割の企業が「コミュニケーション能力」や「主体性」、「チャレンジ精神」を挙げています。(日本経団連 「企業が社員採用時に求める資質」参照)
多くの企業が社員に上記の能力を求めているため、自社に適した母集団を作るためには、複数の項目を合わせ、独自のターゲットを定めなければ、他社との差別化を図ることは難しくなります。
ただし、あまりにも独自性が強かったり、目標が高すぎたりすると、今度は人が集まりにくくなりますので、バランスが必要です。
④ 採用活動費用や担当チームを決める
採用活動は費用と時間を要します。採用活動もオンライン化が進み、合同説明会などの会場費用は抑えられつつあります。
しかし職種や企業によっては人が集まりにくいため、複数の求人サイトの掲載など、募集費用が掛かる場合もあるでしょう。
また、採用活動は人の個人情報を扱う業務であるため、情報の取り扱いをしっかりと行える担当者がふさわしいと言えます。
⑤ 選考方法や合格基準を決定する
どのような選考方法で、どのような人物を合格とするのかはっきりとした基準があり、採用に携わる内容は、チーム全体で理解されていますでしょうか。
選考は、性別や学校で区別するなど、公平ではない理由で選考を行う事は良くありません。
学生時代の成績、面談時の受け答えの仕方、学生時代の経験や所持している資格、人物像、筆記試験など、誰もが納得する客観的な基準で合否を決定するようにしましょう。
⑥ 募集方法を選定する
求人の募集方法は、多岐に渡ります。
自社HPや、新卒や第二新卒を対象とした大手求人サイトで募集を掛けている企業もありますし、学生の利用率が高いSNS媒体を利用する企業も増えています。
また、専門性の高い知識を必要する企業では、社員の卒業校の就職コーナーに募集が出すことや、学校を通じ優秀な生徒を直接スカウトするという方法もあるでしょう。
募集する職種や採用したい人数などに合わせ、手広く募集を掛けるのか、的を絞りターゲットを探すのか、募集方法を決める必要があります。
5 採用計画を見直そう
採用計画が出来ましたら、実行前に過去の実績を踏まえ、全体の流れを見直しましょう。
① 過去採用した人員定着率や実績振り返り
採用活動は、採用した社員が能力を発揮し、実績を残して初めて成功と言えます。
過去に採用した人は、現状どのような状況でしょうか。
転職することなく在席しているか、会社が求める実績を出しているか、能力を発揮できる職場環境になっているか、過去の実績と同時に職場の状況など、過去の実績が今の計画にきちんと活かせるよう、振り返り作業をきちんと行いましょう。
② 採用コストや体制の見直し
採用活動にはさまざまな方法があります。SNSや各種求人サイト、自社HPなどの企業の求人情報を見て求職者が申し込む方法と、反対に企業から求職者情報を見てスカウトするダイレクトリクルーティングもあります。
その他にも社員が知人を紹介するリファラル採用、小規模な交流会を通じて出席者の中からスカウトする採用ミートアップ法なども、トレンドになりつつある方法です。
多様化する募集方法ですが、求人サイトやダイレクトリクルーティングなどを利用すると便利でありますが、コストが掛かります。
反面、自社HPやSNSでは費用が掛からない分、募集から選考まですべて自社で行う必要があり、作業工程は多くなります。
外部サービスの利用には過去の採用実績や採用市場の動向、経済状況を見ながら、どの方法で採用活動を行って行くのか、確認しながら行って行きましょう。
③ 実行後は今回の計画について見直し
採用計画を実行したら、今回の事を分析できるようデータ化します。工程ごとに振り返り、問題点や改善点を洗い出し、次回の採用計画に活かします。
経済動向や事業展開により、採用事情は目まぐるしく変化します。過去の動向をみつつ、次回最適な採用計画が立てられるよう、情報を整理しておきましょう。
6 まとめ
今回は、採用活動で失敗しないための、準備や計画方法についてご紹介致しました。
自社に適した人材を採用するには、自社内外をしっかりとした下調べと、準備に基づいた計画づくりが必要です。
有能で適正な人材に長く定着してもらうためにも、この記事を参考に採用計画を立ててみてください。
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