少子高齢化や世界経済状況の変動により、優秀な人材を獲得する活動は、日々活発な動きを見せています。
優れた人材を採用へとアプローチするため、多種多様な採用方法が誕生していますが、「タレントプール」という手法を活用した採用方法も、トレンドの一つになりつつあります。
タレントプールとは何なのか、自社に適性のある優秀な人材を採用に繋げるには、どのように活用していけば良いのか、タレントプールを活用した有効な採用活動方法について、ご紹介致します。
1、タレントプールとは
タレントプールとは、将来的に採用の可能性がある優れた人材と繋がっておき、短期的、あるいは中長期的に採用へと働きかける手法の事を言います。
タレントプールという言葉は、アメリカ大手経営コンサルティング マッキンゼー・アンド・カンパニーが行った報告書の中で、初めて発表されました。
2011年に「The War for Talent」という題名で発表された報告書は、同カンパニーがアメリカで行った人材の獲得や育成に関する調査をまとめた物です。
タレント(Talent)は人材のことを指し、プール(Pool)は貯蓄を意味します。同報告書では、タレントプールと共に、「データベース・リクルーティング」という用語も用いて、加熱する人材争奪戦の中で、優秀な人材を獲得するためには、人材(タレント)を蓄積(プール)し、データ化しておくことが重要になってくることを述べています。
2、タレントプール採用が注目された背景
タレントプールが注目されるようになった背景について、見てみましょう。
① 少子高齢化
日本では総人口は減少の一途をたどり、少子高齢化が進んでいます。総務省が発表している令和4年度5月に発表した人口推移データでは、同年前月に比べ73万人(0.58%)の減少と推移されていました。
特に、これからの労働力となりうる15歳未満の人口が1.72%減と減少率が著しく、全体の約3倍以上となっていました。
少子高齢化で問題となるのが、労働力不足です。働く人口が少なくなれば労働力の取り合いになります。
1回の募集で採用できる人数は限られるため、優秀な人材が定員以上応募して来れば、採用を見送らなければならない候補者も出てくるでしょう。
たまたま多イニングが合わず、不採用と優秀な人材を取りこぼしてしまわないよう、繋がりを保ち、いざという時に、採用へとつなげていくことが出来るということで、タレントプーが注目されるようになりました。
② 働き方の多様化
働き方改革により、プライべ―トとの時間を両立するため、働き方にも柔軟性が求められようになりました。
企業側が働き方に柔軟性を持たせたため、選択肢が広がり、子育て中はリモートワークや時短勤務が可能など、企業を選択する指標の一つになりました。
そのため、労働者がより自分の働きやすい環境を求める傾向が出てきており、労働力の流動の原因にもなっています。
このように働き方の多様化は、人の転職活動の活性化になり、時と場合によっては、人手不足の原因にもつながることになり、急な人の流失に備え、優秀なタレントをプールしておく必要が出てきました。
3、タレントプールを利用した採用活動とは
あらゆる場所で蓄積した人材をデータベース化し、接点を持った人材と定期的に連絡を持ち、状況に応じて採用(リクルーティング)へと繋げるのが、タレントプール採用活動です。
タレント(人材)は、交流会や講習会の出席者、前職の同僚、さらには過去の採用者など、関わりの有った人すべてになります。
過去に何らかの理由で自社と関わりを持ち、採用したい人材だが、転職の意思が無い人、何らかの理由で現在転職が出来ない人など、アプローチしたいが、すぐには転職が難しい人材をプール(貯蓄)して置き、定期的に連絡を取りつつ、長い時間を掛けて自社に興味を持ってもらい、採用へとリードしていきます。
タレント(人材)には、過去に不採用となった人も含まれます。不採用になった人は候補者にならないと考えられがちですが、企業を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。
前回の募集では、募集業種が候補者の持つ資格ではなかったが、新事業展開や退職者の発生により、今後欲しい人材となる可能性もあるでしょう。
このように、蓄積した優秀な人材と中長期的に関係を深めながら、必要に応じて優秀な人材を的確なタイミングで採用へと活かせるのが、タレントプール採用活動の大きな特徴です。
4、採用活動にタレントプールを利用するメリット
採用活動にタレントプールを利用した場合の、メリット6選をご紹介致します。
① 採用活動の効率化
メリットとしてまず挙げられるのが、採用活動の効率化です。
採用活動を一から行うと、求人広告の掲載や面接日の日程調整など、いくつかの工程が必要で、時間も労力も掛かります。
タレントプールを利用すれば、すでに候補者と面識があり、候補者側も企業の内情についてある程度理解している状態です。
そのため、採用したい時期と求職者が入社したいという時期がマッチすれば、採用へと工程は、一から採用活動をスタートするより、スムーズに運ぶことになります。
企業が採用活動を行いたい時期と、有能な人材が転職を考える時期は同じとは限りません。採用したい人材と、定期的につながりを持って置けば、タイミングを見て採用へと繋げていくことが可能になります。
② コスト軽減
採用活動には、費用が掛かります。求人サイトへの掲載や求人広告など、新しい人材が必要となるたびに募集を掛けていたら、労力の負担だけではなく、コスト面でも大きな負担になるでしょう。
そうして時間とコストを掛けて募集を掛けても、マッチする人が採用できなければ、採用活動が長期化や、採用者がすぐに退職してしまうことにもなりかねません。
タレントプールを活用すれば、求人にコストを掛ける必要もなく、必要なタイミングでプールの中から、費用を抑えつつ適正な人材を採用へと導くことが出来ます。
③ 転職潜在層へのアプローチ
有能な人材だが、他社勤務中で現在転職の意思はない、育児中や海外赴任中で会社が求める時間帯や場所で働くことが出来ないなど、いわゆる転職潜在層と呼ばれる人たちもタレントプールに入れておきたい人材です。
他社勤務中の転職潜在層は、コンスタントに連絡を取り、少しずつ自社をアピールして興味を持ってもらうようにします。
何らかの理由で会社が希望する時間や勤務地で働けない方は、時短勤務やリモートワークなど、柔軟な働き方が出きるよう配慮するなど、環境を整えてアプローチしてみましょう。
④ 採用者の定着率が高まる
人員が不足し、いざ求人募集を掛けても、求める母手段が形成されるとは限りません。なぜなら求人募集を掛けた時に、職を探している人にしか情報が届かないからです。
そのため、求人募集で集まった人たちが、求める人材とマッチしなくても、人手が足りなければ、集まった母集団の中から採用者を選ぶことになります。
とりあえず、採用しても採用者が企業と合わなければ、早期退職へと繋がるでしょう。
その点タレントプールを利用すれば、必要とする人材を集めたデータベースの中から、適性のある人だけを候補者とすることが可能です。
適正のある人だけが候補者となれば、企業と採用者のマッチ度があがり、採用者の定着率も高まります。
⑤ 急な人員不足でも安心
経済状況に合わせ、企業での人の動きは流動的です。退職者が多く発生し、一定の人数が必要になったなど、人材の過不足は常に起こりうる問題です。
すぐに採用する予定がない人でも、有能な人や自社に適正があると思われる人は、今後の事業拡大や人員不足に備えて、タレントと定期的に連絡を取りプールしておくと、いざという時に、スピーディーに対策が取れるため安心です。
⑥ 専門知識保持者や新規事業開拓時に対応できる
今後の事業展開によっては、専門の資格やノウハウを持っている人が必要な画面も出てくるかもしれません。
例えばライバル会社が、新規事業を展開し、成功したとしましょう。
自社でも同様に新規事業に乗り出したくても、社内にノウハウを持った人がおらず、新たに雇いたいと考えても、専門の資格や経験を持つ有能な人は、そうそう多くありません。
専門知識や経験を持つ人材は、すでに他の企業に勤務していることが多く、いざという時に、募集を掛けても、すぐに採用するのは難しいでしょう。
そのような場面でも、過去に関わりを持ち、タレントプールをしておけば、採用が難しい専門職の人でも採用へと繋げることができます。
5、タレントプールを有効活用するために
タレントプールはただ、人を集めれば良いと言うものではありません。必要な人材を必要な場面で活用できるよう、目的を明確にし、内容を整理しておかなければなりません。
ここでは、タレントプールを有効に活用するためのポイントについて、ご紹介します。
① 事業展開を理解し必要な人材をハッキリさせる
企業が今後の事業をどのように展開していくので、必要な人材は決まります。人が多くても必要に応じて動き会社を発展させる労働力とならなければ、意味がありません。
それには、まず企業がこれからどのような事業を手掛けていくのか、それを行うには、どのような能力を持つ人を、何人必要とするのか明らかにする必要があります。
今後事業展開において、採用へとつなげたい人材には、適切にアプローチをしておき、採用へと導いていきましょう。
② プールした人材をデータベース化し管理する
プールした人材は、企業の職種に応じて、データベース化し分類しておきます。データ管理と整理が行えていれば、いざという時にすぐに採用活動へ活かすことが出来るからです。
プールしたタレントをどのように分類してよいのか分からない場合、専用のシステムを利用する方法もあります。
近年、AI技術を利用した人材管理システムの開発も進んでおり、各社からいろいろなタレントプール管理ツールが出ています。
費用は掛かりますが、利用してみるのも良いでしょう。
③ 定期的にコンタクトを取る
せっかく、タレントしたプールを管理していても、アクションを起こさなければ意味がありません。タレントしたプールとは定期的にコンタクトを取る必要があります。
コントタクトを取る方法は、スカウトメールや交流会など、多様な方法があります。どのタイミングでコンタクトを取るのかは、求職者の状況によりますので、様子を見ながら適切なタイミングを逃さないようにしましょう。
6、タレントプールの効果的な採用活動に役立つツール
大勢のタレントを収集するとかなりの情報量となり、管理していくのも大変です。Excelソフトなどで、社内で作成した資料を基に管理していくことも可能ですが、タレントが増えていけば、ミスも増えやすくなります。
そこで、タレントプールを利用した採用活動を行うには、次のようなツールを使うと便利です。
① SNS
ビジネスでSNSを利用する企業も増えています。ビジネスシーンで利用されるSNSには、TwitterやFacebook、Linkedlnなどがあります。
上記で挙げたSNSは、情報発信の他、リスト作成機能があります。SNSを通じて繋がりを持った人たちをリスト別に分け、管理する事が可能です。
特にLinkedlnは、ビジネス用SNSとなっており、実名での登録が必要なため、信頼度が高いです。また有料ですが、採用管理プランがあり、人材データの一括管理や行動追跡機能で、登録者の行動を追跡することができます。
② 採用管理システム(ATSシステム)を利用する
続いて、採用管理に特化したシステムツールを利用する方法です。採用管理システムを使うと、求人票の作成や応募者情報管理、選考進歩状況など、採用にまつわる作業のコストや工程を減らすことが出来る便利な機能です
システムは各社でさまざまな特徴があり、CVSによる候補者一括登録、候補者のリスト化機能、スカウトメールの作成など、採用活動助ける便利な機能が各種備わっています。
各社無料体験できるサービスもありますので、タレントプール採用を考えている企業は、こうしたサービスを試してみるのも良いでしょう。
7、まとめ
今回は、タレントプールを利用した有効な採用活動の方法についてご紹介してきました。人の採用は、企業の発展に大きく関わる大切な業務です。
どの企業でも優秀な人材を採用したいと考えますが、今まではタイミングが合わなければ、優秀な人材を見送る場面も多くありました。
優れたデータベースを作成し、タレントプールを構築すれば、優秀な人材と中長期的につながりを持っておくことが可能になり、中長期的な視野で、効率的な採用活動が可能になります。
タレントプールを活用した採用活動を検討されている企業は、この記事を参考にしてみてください。
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