スポーツのラグビーやIT開発の世界で「スクラム」という言葉はよく聞かれます。
スクラム採用とはスクラムを組むように社員どうしが団結して、採用活動に携わっていこうという概念の事を指します。
近年ではさまざまな採用方法が生まれていますが、この記事ではスクラム採用がどのような物なのか、取り組み方やメリット・デメリット、成功事例などをご紹介していきます。
スクラム採用とは
スクラム採用は株式会社HERPの代表取締役により提唱され、ベンチャー企業を中心に広がっていきました。
採用活動は担当するチームや管理職、経営陣だけが活動に携わることが一般的ですが、スクラム採用は、会社全体で採用活動に取り組みます。
採用に関する権限を現場へ譲渡し、現場主導で採用活動を行うのが大きな特徴です。
自分達の仲間となる人を採用担当者や経営陣に任せるのではなく、採用担当者のアドバイスを受けながら、現場が積極的に採用プロセスに参加し、社員も会社も共に成長していくことを目的としています。
スクラム採用が注目されるようになった背景
スクラムという言葉はラグビー選手が肩を組んで押し合うところから来ており、ITのソフトウエアの開発手法としても、使われるようになりました。
複雑さとスピードが増すITの世界で競合他社より抜きに出るためには、大規模なチームで長期的な計画をゴールまで実行していくは難しくなってきました。
技術の発展が著しい世界では1つのチームを小さくし、市場の変化に合わせられるよう、柔軟で小回りの利く方法に転換した方が、会社の成長に繋がると考えられたのです。
こうしたスクラム開発の考え方を採用に取り入れたのがスクラム採用です。
では、どのような背景でスクラム採用が注目されるようになってきたのか、見ていきましょう。
・求職者の意識の変化
売り手市場においては求職者が会社に求めるニーズも多様化しています。
給与や昇給、福利厚生などの条件に加え、プライベートと仕事の両立、さらにはリモートワークの可否など、求職者が企業に求める条件が待遇面だけでははく、働きやすい環境かどうかにフォーカスされるように、変化してきました。
こうした求職者の意識の変化に合わせ、企業も業務のオンライン化など柔軟な改善が必要になりました。
・採用活動の多様化
採用の世界でもIT開発と同じく、優秀な人材を獲得するために各企業で多種多様は方法が生まれています。
売り手市場が続く中、優秀でマッチする人材を採用へ導くためには、これまでとは違った採用活動を行う事が必要になってきました。
例えば、SNSを利用した求人広告や社員の知人や友人を紹介するリファラル採用など、採用市場においても次々に新しい方法が生まれてきました。
特に中小企業は大手企業のように大々的に求人広告を出して人を集めることは難しく、人材不足の悩みにぶつかりやすい傾向があります。
こうした背景の中で採用部署だけが一律の業務計画に作り、採用活動を行おうとすると状況に応じた柔軟な対応が難しく、費用と労力が掛かる割には採用者が定着しない、成果が出ない、ということに繋がりかねません。
そのため採用活動においても現場目線に合わせ、小回りの利いたフレキシブルな対応が求められるようになりました。
求職者の意識の変化や売り手市場の状況が採用活動の多様化を産み、その中からより効率的な採用活動を求める中でスクラム採用という考えが生まれたのです。
スクラム採用の3つの基本要素
スクラム採用には大きく3つの基本的な要素があります。
「現場への権限委譲」「成果の可視化」「採用担当のプロジェクトマネージャ-化」という3つの要素を、PCDAサイクルで回して運用していきます。
3つの要素をPCDAサイクルで回して行くことで、常に改善を繰り返し、社員の意欲を高め、よりよい活動へと繋げていきます。
・現場への権限委譲
まず1つ目の要素は、現場への権限の委譲です。
一般的な採用活動では採用チームや管理職、経営陣が権限を持っていますが、スクラム採用では、この権利を現場に譲ります。
現場に権限を委譲するにあたり、採用活動の業務の流れを細分化し、続いて各業務の権限を適した部署や担当者へ委譲します。
この方法を取ることの大きな特徴は職場における現場の意見を大きく取り入れる事で、現場が求める人物像を描くことが出来る点です。
経歴やスキルだけではなく、より具体的な人物像を描けるため、ミスマッチになりにくいと言えるでしょう。
・成果の可視化
続いては成果の可視化です。
採用活動は採用した人材が、会社の求める成果を上げて、初めて成功と言えます。
スクラム採用では採用活動を通じて得た成果は、皆でフィードバックし、社内全体で共有します。
社員全員で採用活動の成果を共有する事で、担当者任せではなく社員一人一人が採用活動について振り返るようになります。
採用担当者を中心に活動後の成果を元に会社全体で改善案を出し合い、次の採用活動に繋げていきます。
・採用担当のプロジェクトマネージャー化
現場へ採用活動の権限を委譲するといっても、いきなり権限だけ委譲しても、現場は混乱してしまうでしょう。
そこで採用担当部署がプロジェクトマネージャーとして、採用に関する知識や経験を現場に落とし込みます。
その後も現場に委譲して終わりではなく、採用担当の部署が定期的にフォローしていきます。
採用担当の知識や経験を、現場に教えていくことで、現場も採用業務の経験を積み、フィードバックと改善を行います。
その中で社員全体が、採用活動の意味を考えつつ新しいノウハウを得て、採用業務の責任感を強くしていき、社員の会社改善の意欲を高めていくという狙いもあります。
スクラム採用のメリット・デメリット
スクラム採用は、現場に権限を移し、社員一丸となって、採用活動を行おうという取り組みですが、こうした活動には、メリットだけではなく、デメリットもあります。
スクラム採用のメリット・デメリットについて見ていきましょう。
スクラム採用のメリット
スクラム採用のメリットをご紹介します。
・社員のエンゲージメントの向上
採用活動を行うためには自社についてよく知っておかなければなりません。
どのような企業理念を持ち、今後どのような事業を展開するのかを熟知して置かなければ、求める人物像が見えてこないためです。
そのため、社員が採用活動を行ううちに、さらに自社について理解を深める必要があるため、自然と社員のエンゲージメント(愛社精神)が高まっていきます。
・求める人物像に出会いやすくなる
現場社員が主体となり、採用活動を行うと現場目線での採用活動になります。
自分と共に働く人を探すことになりますから、求める人物像が具体的になるでしょう。
具体的な人物像が描ければ、より希望に近い母集団を形成しやすく、優秀でマッチする人物が採用に繋がる確率が高くなります。
社員一人一人が目的を持って採用活動を行うため、採用活動の幅も広がり、転職潜在層など、思いがけないところから、求める人材に出会える可能性も大きくなります。
スクラム採用のデメリット
続いてスクラム採用のデメリットを見ていきましょう。
・採用活動の方向性にバラつきが出やすい
スクラム採用では社員が主体となって採用活動を行うため、各部署や多くの社員が採用業務に携わることになります。
関係する社員が多くなると、出てくる問題が、認識の違いから生まれる方向性にズレです。
同じ目標を見聞きしていても、受け取り手によって、バラつきがでてしまう事があり、関係する人が増えれば、バラつき大きくなる確率も上がります。
・社員の負担が大きくなる
社員が採用活動に加わるという事は通常業務に採用業務がプラスされることになります。
つまり、社員の業務負担が大きくなるという事です。
また、採用活動を通常業務と同時進行にするにあたり、役割や業務分担について、しっかりとしたルールがなければ、業務負担が大きくなったり、本来の業務に支障がでたりするリスクもあります。
スクラム採用を成功させるためのポイント3つ
スクラム採用はメリットも多いですが、しっかりとしたルール作りや役割分担をしなければ、社員の負担が増え、活動も失敗に終わってしまいかねません。
スクラム採用を成功させるには、どのようなルールで運用していけばよいのか、ポイントをご紹介致します。
・役割分担とルール作りを行う
スクラム採用は社員が通常業務に加えて採用業務を行う訳ですから、採用を専門に行うチームのマネージメントが欠かせません。
採用業務を細分化して割り振りを行う部署や担当者など、役割分担を細かく決めておく必要があります。
また、業務を遂行していくにあたり、採用目的やルールを決め、コンスタンスに進行具合や状況のフォローをしていくようにしましょう。
・採用管理ツールを使う
採用活動をスムーズに行うには、しっかりとした情報管理が必要です。
採用に関わる人数が多くなれば、その分情報管理を浸透させるのは、大変になってくるでしょう。
スクラム採用の管理を行いやすくするために、採用管理ツールを使用するのもポイントです
現在採用関連のツールは数多くあり、応募者の個人情報や評価などをはじめ、面接日の日程調整、メール文章のテンプレートなど、さまざまなサービスが展開されています。
スクラム採用成功事例企業5つご紹介
数ある採用方法の中からスクラム採用導入し、採用活動を成功させている企業をご紹介致します。
・株式会社メルカリ
株式会社メルカリは、「新たな価値を生み出す世界的なマーケットプレイスを創る」というミッションの実現のために、次の3つのバリューを掲げています。
「Go、Bold(大胆にやろう)」「ALL for One(全ては成功のために)」「Be professional(プロフェッショナルであれ)」という3つのバリュー軸に社員が情報共有し、採用に関わっています。
創業当時からリファラル採用を取り入れ、社員全体が積極的に採用に関わり、採用活動を成功させています。
・株式会社ヘイ
株式会社ヘイでは採用する人物像、採用人数など、採用に関する権限を現場に徹底して委ねています。
人事部は基本的に一次面接後のサポートは行いますが、採用に関する責任は現場が負うという考えのもと、社員への権限委譲を行っています。
また、定期的に採用イベント「Hello hey」を開催し、経営陣から社員まで幅広い社員が参加し、採用活動に力を入れています。
・BESE株式会社
BESE株式会社は現場社員に採用方法を変える事を理解してもらう事からスタートしました。
人事部など採用専属部署が立てた採用計画に現場社員を勢力的に取り込み、参加するようにしています。
また、「内定判定会議」と呼ばれる現場に求める人材や採用人数など、現場の声を重要視する会議を開き、より現場にマッチする人材の採用するようにしました。
さらに内定承諾はチーフマネージャーを通じて行うようにし、現場の声が直接伝わるように工夫を行う事で成功へと導きました。
・株式会社POL
社員がスカウトメールを送るなど、社員が採用活動に参加する行うスクラム採用の取り組みを行っているのが、株式会社POLです。
スカウトしたい人物に共感軸スカウトメールと呼ばれる、プロフィールに対する共感とス”Why you(なぜあなたなのか)”という気持ちを込めたメッセージでスカウトし、興味を持って貰う事で、高い返信率を誇り、採用活動を成功させています。
まとめ
今回はスクラム採用の仕組みや注目を集めることになった背景、導入し成功している企業例について、ご紹介してきました。
採用市場は売り手市場が続き、優秀は人材を獲得する事には多角的なアプローチが必要な時代になってきています。
新しい採用方法を取り入れてみたい、スクラム採用の導入について検討しているという企業は本記事を参考にしてみて下さい!