ネットは私たちの生活に深く関わっており、オンライン面接やSNSなど、企業の採用活動の場面でも大きな役割を果たしています。
近年、公式SNSで人事担当者が不適切な内容を投稿し、炎上となる騒ぎとなることがありますが、企業は、公式TwitterなどのSNS投稿だけではなく、応募時の電話対応や面接など、直接応募者と企業が関わりを持つすべてにおいて、注意を払わなければなりません。
特にSNS投稿は気軽さゆえに、あっという間に拡散し、企業の信頼や人気に大きな影を落とすことがあります。
そこで今回は過去に炎上となった投稿を参考に、炎上を防ぐために必要な対策とポイントについて解説します。
炎上となった事例の紹介
まずは炎上となった事例をご紹介します。人事担当者が公式SNSで投稿した内容だけではなく、電話対応やメールの内容など、企業名を出して発信した内容や、応募者とのやり取りすべてが、世間に広く可能性を認識しておきましょう。
① 人事担当者の投稿内容で炎上
人事担当者が企業名と人事担当者を名乗った公式SNS以下の内容を投稿し、炎上となった事例です。
内容 |
・N社 給与や待遇にこだわりのある人とは働きたくない |
・S社 採用活動は採ってはいけない人を見極めるのが仕事 |
まず、N社の「給与や待遇にこだわりのある人とは働きたくない」発言ですが、ITコンサルティングを手掛ける企業の人事担当者が、企業のアカウント名でTwitterに投稿した内容です。
N社は、新卒採用関わる従業員を募集しており、その募集に関して投稿した内容で、このTwitterの内容に関し、求職者が給与は待遇で企業を選択するのは当然だと多くの批判を集め、炎上となりました。
炎上となった背景には、Twitterの投稿内容とともに、この企業の募集内容にも関係があります。
以下が募集内容の一部になります。
職 種 : 人事部
雇用形態 : 正社員
給 与 : 360万円~500万円
賃金形態 : 年俸制
残業手当 : 固定残業代制
退職金 : 無
平均残業時間: 40時間程度(人事部平均)
必須項目 : 4年生大学卒または大学院卒
社会人経験2年以上
賃金形態が年俸制で、残業手当は固定残業代制度、平均残業時間は40時間となっており、現状(2022年)の労働基準法で定められている1か月の時間外労働限度45時間に迫る残業時間となっています。
給与の中に、どのくらい固定残業代が含まれるかについても記載がなく、退職金もありません。
さらに、自身のツイートした内容に批判が集まると、翌日は意見のお礼と共に、「あくまで自分の考え、価値観。
採用に携わる方は、自分の目で、自分の価値観で見極めたい、価値観はそれぞれ違うので、自分が正解でもないし、それぞれの価値観がそれぞれの正解。」と述べ、さらに炎上となる騒ぎとなりました。
次に名刺管理サービスを展開しているS社です。
Twitterに「採用活動は採ってはいけない人を見極めるのが仕事」と投稿し、求職者に対し、高圧的で失礼だという意見が殺到しました。
先にご紹介したN社は、炎上したTwitterを削除せず、会社からの謝罪や訂正文などもなく、掲載されています。
反対に、S社の人事担当者のTwitter投稿はすぐに削除され、リツイートで反論してきた人は、ブロックするなどの行いをしたことから、さらに話題となりました。
② 採用面接内容を実況中継し炎上
・ネットポイント事業を展開するN社の社員が、Googleプラスと呼ばれるSNS投稿で、採用面接を実況中継し、問題となりました。
N社では、面接に訪れた30歳男性の面接内容を、リアルタイム形式で中継し、内容が面接に訪れた男性を軽蔑するような内容だったこと、複数メンバーが傍観していたことから炎上となりました。
のちに、この投稿は架空の面接だったことが判明しましたが、投稿した人は、ネット上で実名が晒され、会社には投稿当日にクレームが殺到しました。
会社は、こうした状況を受け、速やかに本人の確認を行い、投稿から約6時間~7時間ごろには問題の投稿文を削除し、次の日には、お詫びの投稿が掲載され、内定者や取引先への説明がなされたため、それ以降騒ぎになることなく、収まりました。
③ 採用担当者のメールが不適切でSNS上で拡散
文房具で有名なT社の人事担当の方が、2011年東日本大震災後ののち、就活性に向け、複数回エントリーシートに関するメールを送信し、その内容が、不適切で配慮を欠いた内容だということで、大きな問題となりました。
このメールの3日後に、ゼネラルマネージャーが謝罪文を送り、問題取集となりました。
炎上投稿をしてしまう理由
企業における人の選考とは、求職者と企業のマッチング度を見るために行われるもので、採用担当者は、あくまでのその窓口業務を担っているに過ぎません。
それなのに、一部の採用担当者の中には、選考=採用担当者の立場が上である、と勘違いしてしまう人がいます。
この原因としてはいくつかの理由が挙げられます。
・採用担当者の性格
採用担当になり、高圧的な態度になったというより、もともと持っていた本人の気質によるところが大きいと考えられます。
担当者の性格が、人の上に立ちたい、自分は他の人より上だという潜在意識が強く、採用担当業務につき、人の選考に関わる立場になり、表面に出てきたためと推察されます。
・人事部の体制の問題
人事部が機能していない、上司に指示判断能力がないといった、人事部の体制に問題があり、トラブルに発展するケースです。
企業としてSNS投稿だけではなく、すべての営業活動に対し、マナーのある対応が求められます。
組織の体制がしっかりしていれば、お手本となる先輩社員の様子を見て学んだり、マナー違反となる行動をすれば、指導されたりといった対応がなされるでしょう。
ところが、企業規模が小さい、新規事業でノウハウの蓄積がない場合など、体制が整っていない場合、社員が問題行動を起こさないよう見守ることが出来ない、問題が起きても対処できずに、炎上騒ぎが大きくなってしまいます。
採用業務で炎上とならないためのポイント
電話やSNS、メールや対面など、さまざまな方法で求職者と初めに直接つながりを持つのが、採用担当者です。
採用担当者は、会社案内や会社説明会の案内など、情報発信も行うため、言葉づかいや態度などに気を付ける必要があるでしょう。
では、炎上騒ぎにならないためには、どのような点に気を付ければよいのか、採用業務で、炎上騒ぎとならないためのポイントについてご紹介します。
① あらゆる行いが晒されるリスクを認識する
炎上というと、SNSに投稿した内容に注目されがちですが、それだけではありません。電話対応やメール対応、面接時の応対など、あらゆる場面が対象となります。
どのような企業でも社会人として求められるのは、ビジネスマナーです。電話での応対やメールなど、直接顔が見てないやり取りであれば、特に注意が必要です。
求人広告を見て応募した学生が、学校名や年齢を告げた途端ぞんざいな扱いを受けたなどの経験談は昔からありましたが、ひと昔前であれば、友人や親、学校の先生など、周囲の人にしか漏れなかったことが、今では簡単に、ネット上にさらされてしまいます。
就労世代と呼ばれるZ世代やY世代は、ネット社会で育ち、ネットの世界が重要な情報源であり、コミュニケーションツールです。
そのため、就職活動という自分の未来が掛かった活動に対し、理不尽な行いを受けたとき、SNSに投稿し、共感を求める傾向があります。
企業の窓口として、あらゆる行いが見られていることを認識しておきましょう。
② マニュアルを用意する
次に必要なのが、マニュアルです。
採用担当として、応募者への電話の出かたや掛け直す場合の話し方、ビジネスメールの出し方や返信の出し方など、例を挙げ、どの人が対応しても、失礼のある対応とならないようマニュアルを作成します。
SNSへの投稿やリツイートについての発信だけではなく、何らかのトラブルが起こった時の対処についても、まとめておきましょう。
ネット社会では、どんな情報でもあっという間に拡散してしまうため、炎上になりそうなときは、早めに火消しの作業が必要になります。
トラブルが起きてから、対処方法を考えていたのでは、あっという間に情報が拡散してしまい、企業にとってダメージ大きくなるため、事前に対処法を決めておき、いざというとき素早く対応できるようにしておきます。
③ SNS研修を定期的に行う
SNSは情報をリアルタイムで閲覧できたり、広く拡散できたりするメリットがあります。
SNSはいまや就労世代の90%以上が活用しており、一部を除きほぼ無料で利用できるため、
上手に活用できれば、有効な広告手段になります。
同時に、少しでも企業の対応に問題や疑問があれば、すぐにネット上で晒されてしまうリスクがあることになります。
企業の顔として窓口業務を行っているにもかかわらず、私的な感情を入れて求職者の対応を行えば、あっという間にネット上に掲載される可能性があることを忘れてはなりません。
また、ネット社会の怖い点は、一度ネット上に挙げられた投稿は、削除してもほぼ半永久的に残り、何かあると蒸し返されることです。
企業名を出して投稿する場合は、複数の人が事前にチェックする、定期的に研修を行うなどで炎上とならないよう、注意する必要があります。
従業員による不適切な投稿があった時の対処
十分に注意していても、不適切な対応をしてしまい、クレームやトラブルが発生している場合、すみやかに対応しなければなりません。
採用業務の中でも、炎上になりやすいSNSで、不適切な投稿をしてしまった場合の対処法について、まとめました。
① 投稿内容の保存
まず、投稿内容をスクリーンショット等で保存しておきます。スクリーンショットを撮っておけば、掲載時の内容をそのまま保存出来るので、役立ちます。
クレームが来た際に、内容の削除や加工を防ぐため、日付が分かるようスクリーンショットでの保存や、プリントアウトしておくようにしましょう。
② 投稿内容と投稿者の確認
次に投稿内容と投稿者を確認しましょう。投稿者以外に投稿内容を確認した人(先輩社員など)がいれば、合わせてヒアリングを行います。
問題となった投稿がされた経緯を探ります。
③ 速やかな削除要請
投稿内容に問題があった場合、速やかに投稿者に削除を要請しましょう。SNSでの投稿はあっという間に拡散してきます。
深夜や休日であっても、すばやく削除を行いましょう。
④ 公式サイトで公表と謝罪文の掲載
投稿内容について、多くのクレームが来ている、企業の信頼を大きく損ねる内容など、投稿内容の影響が大きいと判断される場合は、会社㏋や公式SNSなどを通じて公表および謝罪を行います。
その際、時事系列で謝罪がなされていると、沈静化も早いため、誠実でスピーディな対応を取るようにします。
⑤ 再発防止対策
問題投稿の削除と謝罪で収まったあとは、再発しないよう対策を練ります。問題投稿をした本人への指導や注意と共に、全社員に向けても教育を行い、二度と繰り返さないよう、対策してきましょう。
求職者は未来の顧客!誠意ある対応をしよう
企業は、求職者が自社にマッチするか見ているのと同時に、求職者からも見られていることを忘れてはなりません。
不採用となった人が、将来自社の取引先や顧客となる可能性もあります。応募者は自社に興味を持ち、応募してくれた人です。誠意ある対応を心がけましょう。
まとめ
今回は、採用担当者のネット炎上に関する事例と、炎上させないためのポイントや炎上となった場合の対策についてご紹介してきました。
求職者がまず、会社の顔としてつながるのが採用担当者です。会社のビジョンや雰囲気に惹かれ、働いてみたいと興味を持ち、企業とのつながりを希望する求職者には、マナーをもって応対しなければなりません。
過去の事例を見つつ、炎上騒動にならないよう、本記事を読んで参考にしてみてください。