中途採用のトレンドと業界や市場の動向を徹底分析

採用を取り巻く環境は、世界経済の変動に合わせて、常に変化を遂げています。採用活動も経済状況に合わせ、常に変わっていかなければなりません。

2020年より続くコロナ渦やSDGsの影響により、リモートワークの導入やオンライン面接など、働く環境も大きく変わりました。

今回は、変化する採用市場の中、中途採用におけるトレンドと、業界や市場の動きについて、ご紹介していきます。

2023年上半期は全体で求人が増える見込み

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複数の大手総合研究所では、内閣府から発表された2022年10月~12月期実質GDP速報値を元に、2023年上半期のGDP速報値の見込みを出しています。

その内容によりますと、2023年上半期のGDP速報値は、前年同月より+1%から+1.9%ほどを見込んでいます。

理由としては、規制解除によるインパウンドの増加、コロナ感染症の対策緩和による全体的な経済活動の回復、金融政策や財政政策の継続などが考えられます。

その他にもDX推進による事業拡大などの理由により、豊富なスキル持つベテランをはじめ、今後の人材育成を意識した若年層の採用まで、幅広い採用活動が活発化する事が予想されています。

2023年上半期の求人状況

厚生労働省の㏋によりますと、2023年1月の有効求人倍率は1.35倍で、前月と比較すると0.01ポイント低下していますが、新規求人は前年同月と比較すると4.2%増となっています。

また、総務省が2023年3月31日に公表した“2023年2月労働力調査”では、就業者数は前年同月と比べ9万人増加し、7か月連続で増えています。反対に完全失業率は前年同月に比べ6万人減少し、20か月連続で減っています。

勤め先や事業の都合による離職は、前年同月より9万人減少し、自己都合による離職は2万人増加、転職のための離職も2万人増加という結果になっています。

すなわちリストラや事業悪化など、会社都合による離職は減っており、日本の経済状況が安定してきている事が伺えるでしょう。

上記の事から2023年上半期は、さまざまな企業が、コロナ渦で控えていた採用活動の再開、新規事業の拡大のため、採用枠を増やすことが予想されます。

中途採用全体のトレンド

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業種により多少の違いはあるものの、採用市場全体が活発化するなか、中途採用の動向がどのようになっているのか、中途採用のトレンドについて見ていきましょう。

・採用方法の多様化

売り手市場が続く中、各企業は自社にマッチする優秀な人材を獲得するため、採用方法が多様化しています。
採用競争が激しくなると、自社に合う優秀な人材を、いかに効率的に獲得出来るかという点に焦点が当てられます。

多種多様な採用方法がある中で、近年中途採用で注目を集めているのは、リファラル採用とダイレクトリクルーティングでしょう。

リファラル採用は、社員がリクルーターとなり、自社を紹介する方法です。
自社の企業風土や環境を理解している社員が、スキルや能力をよく知る知人を紹介するため、ミスマッチが少なく、低コストで効率的な採用が可能なため、注目を集めています。

ダイレクトリクルーティングは、企業が自社に合う人材は直接スカウトメールを送り、採用へと繋げていく方法です。

ダイレクトリクルーティングの利点は、会社が求めるターゲットに直接アプローチ出来る事、今すぐ転職を考えていない転職潜在層にもアプローチが可能なため、人が集まりにくい業種や知名度が低い新規事業などで、導入する企業が増えています。

IT関連の人出不足の継続

IT関連の業種は、専門性が高く、高度な技術を要します。
また次々に新しい技術が産まれるため、競争が激しく厳しい業種です。

IT関連の業種では、常に人材不足の状態が続いていましたが、ITの人材が求められるようになった背景には、DX(デジタルトランスフォーメーション)も理由の一つに挙げられます。

DXとは、デジタル技術で生活や社会が変革することを意味します。経済産業省が2018年に発表した“産業界におけるデジタルトランスフォーメーションの推進”により、製品やサービスといった企業が提供する物に対してだけではなく、企業の風土や組織なども改革し、他社より優位性を持つことが求められます。

特にコロナ渦では、急速なDX化が進みましたが、開発や情報セキュリティの分野で対応できる、高度な技術が求められており、今後もITエンジニアの需要はさらに強まると予想されます。

・副業OK企業の増加

厚生労働省が柔軟な働き方の一環として、2018年に“副業・兼業の促進に関するガイドライン”を出しました。
さらにコロナ渦で業績が悪化し、ボーナスや賃金が減り、社員から副業を許可して欲しい旨の要望が聞かれるようになったことで、さらに関心を持たれるようになり、社員の副業を許可する動きが見られます。

主な業種別求人市場の動向

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あらゆる事業が動き出し、市場全体の採用活動が再開されるようになってきました。続いて業種別求人状況について、詳しく見てきましょう。

IT関連

高い技術と専門性が必要で、常に開発が求められる分野です。
そのため、求人数は増加の一途をたどっています。

DX関連に加え、分散型インターネットと呼ばれるWeb3.0への注目、コロナ渦で導入が大幅に増えたリモートワークに対するセキュリティ対策など、IT関連のニーズは常に高まっています。

ベテラン技術者も高齢化が進み、未来のエンジニアを育てる目的やこれまでアウトソーシングで行ってきたSE業務を、今後は社員を研修・教育を行い、SEを内製化する動きも見られており、IT業種の売り手市場は、しばらく続くものと考えられます。

・企画およびマーケティング

2022年秋頃より、コロナ渦を経て、新規事業のスタートを行う企業や組織拡大、業務の見直しや改善ななどを行う企業が増え、企画およびマーケティングのニーズが高まっています。

専門性やスキルが求められるため、他社との競争が激しくなる可能性があります。

スカウトやリファラル採用、ミートアップ採用などで、希望する人材とは接点を持つようにし、マッチする候補者には、候補者の意思を尊重しつつ、スピーディに選考を進めていくようにしましょう。

・販売、サービス業

コロナ渦において、大きく影響を受けたのが、販売やサービス業でしょう。
え感染症対策が少し落ち着き、観光業や結婚式、外食などが再開し、求人募集は増加していますが、従業員が集まらず、営業を再開しても、サービスを縮小せざるを得ないケースもあります。

特に観光業や外食産業は、今後利用客が大幅に増加する事が予想され、従業員獲得のため、販売、サービス業の求人ニーズの高まりは続くと考えられます。

・営業

営業職は採用枠を広く取っている企業が多く、経験者、未経験者問わず、比較的転職しやすい業種ともいえるでしょう。

営業の求人数は増加しており、特にITやコンサルタント業界で採用活動が活発化しています。

リモートワークの導入や業務会税や効率化が求められており、デジタルマーケティングや営業企画などの経験がある人材があると、なお重宝されるでしょう。

・人事

コロナの影響で採用を控えていた企業も、採用再開させるなどの動きが見られます。
特に人材不足に悩むIT関連業務や、観光業や飲食業などの採用活動が活発になっています。

人事業務で大きな役割と言えば採用業務ですが、社員教育や安全衛生管理、福利厚生なども、人事業務の重要な役割です。そのため、採用業務経験だけではなく、社員教育経験者、衛生管理業務経験者などのニーズが高いでしょう。

・医療業界

医療業界には、MRや研究職、医療機器メーカーなどがあります。
2023年では、コロナ渦や世界情勢の影響を受け、薬の材料となる生産や物流、販売を強化する動きが見られ、求人が活発化する可能性があります。

また、新薬開発を支えるCRO(医療品開発事業受託機関)や、バイオ関連の分野でも求人ニーズが高まっています。

・建築、土木業界

ウッドショックによる材料の高騰問題や、住宅取得控除による一般住宅の需要の変動、コロナ渦によるリモートワークの普及や、地方でサテライトオフィス新たな設置など、世界情勢の影響を広く受けている建築・土木業界です。

以前より人手不足の状態は続き、2023年も求人数は増えています。

さらに2024年4月1日から、時間外労働の規制の上限規制が適用され、特別な事情が無ければ月45時間、年360時間を超えて時間外労働する事が出来なくなることから、さらに人手が必要となるため、求人は増える事が予想されます。

また下請け企業に無理な要求を行う、いわゆる“下請けたたき禁止”対策も強化されることから、経験者および未経験者とも求人増加が見込まれることでしょう。

・経理

経理業務は売掛金、買掛金、仕訳、決算業務など、事業を行う上で必ず必要となる分野です。経理部門も他の分野と同様、コロナ渦を経て、求人数は増加しています。

決算書や契約書など、会社の重要な部分を取り扱うため、セキュリティ面からすべてリモートで行うことは難しい面もありますが、リモートワークで行える部分については、一部リモートワーク可とするなど、働き方にも変化が見られます。

WEB関連業界

IT企業同様、WEBデザイナーやコンテンツ企画など、WEB関連業界も求人が増加している業種です。

DX推進やコロナ渦において、コミュニケーション手段のデジタル化に進み、WEB関連の求人は増加しています。

採用活動では、演出や管理を行うWEBディレクターや編集者は、全体の流れやマーケティング、企画力やSEOの知識など、高いレベルの力量が求められるため、即戦力となる中途採用者の方が需要の高い傾向となっています。

・金融業界

銀行や証券会社では、デジタル化に伴い、DX関連の求人ニーズが高まっています。
またITシステムやセキュルティ面の強化、投資やM&A、運用といった面で、専門的な知識を持った経験豊富な中途採用者が求められています。

また、保険・損保系では、未経験者でも営業職の採用活動が活発で、その他異業種でも、マネジメント経験者やセキュリティ強化のため、ITエンジニアの求人なども見られ、しばらくこの状態は続くと考えられでしょう。

まとめ

今回は、中途採用におけるトレンドや市場の動きについてご紹介してきました。
業界ごとに、多少のバラつきがありますが、求人数はコロナ渦に比べ全体的に増加しており、全体として採用活動の活発化が続くと考えらえます。

また、需要が高まり、深刻な人手不足が叫ばれるIT関連は今後も人手不足の状態が続くことの他、経営状況の悪化で副業を許可する企業も、増加すると考えられます。

中途採用に悩む企業は、この記事を読んで参考にしてみてください。