採用面接は限られた時間内で応募者が自社に適正のある人物かを判断する大切な業務です。
選考時に応募者の見極めがしっかりと行われず、適正ではない人材が採用されれば、企業にとっても採用者にとっても、あらゆる面でロスになってしまいます。
今回は適性のある人材を採用するために面接官が面接時陥りやすいポイントや心構えを始め、面接時の質問例やコロナ禍で急増したオンライン面接の注意点などをご紹介します。
面接に面接官が抑えておきたいポイント
① 自社の経営指針や企業理念をしっかり理解しよう
企業にはその企業ごとのカラーや理念があります。従業員がそのことをしっかり理解しなければ、業務を行っていく上でズレが生じてきます。
これから企業の一員として共に働く人を選考するため、面接官は特に自社の企業理念や経営指針について、しっかりと理解しておかなければなりません。
面接官は応募者が自社の企業理念や企業風土と合っているか、内容をしっかり理解しているかを理解する必要があるからです。
面接を担当することが決まったら、今一度自分の会社の経営指針や企業理念を見直して置きましょう。
② 話しやすい雰囲気を作り素顔を引き出す
ほとんどの応募者は面接に備え、ある程度練習をしているとはいえ、面接時に緊張をするものです。
面接に何を聞かれるか分からない、きちんと自分の意見が言えるか心配など、多くの不安を抱えて面接を行っているでしょう。
緊張で思っていることが上手く伝えられなければ、本当の応募者の姿を見せることが出来ずに、終わってしまう事も想像できます。
面接官はまず初めに会場までの交通経路や天気の話、話題のニュースなどの雑談からスタートし、応募者がリラックスできるような雰囲気を作りましょう。
③ 認知バイアスに気をつける
認知バイアスという言葉を、ご存知でしょうか。
認知バイアスとは一言で言えば今までの経験や固定概念などにより、物事の判断や解釈に対する、思い込みや考え方の偏りの事を言います。
認知バイアスは多くの種類があり、採用活動だけではなく、マーケティング、さらには日常生活においても影響を及ぼし、合理的な判断にゆがみが生じる場合があります。
こうした認知バイアスが影響を及ぼすと、面接官は、応募者を合理的に判断できなくなってしまいます。
認知バイアスにより、判断に偏りが生じていないか、冷静で客観的な判断が出来ているかどうか、面接官は意識する必要があることを、覚えておいてください。
それでは多くの種類のある認知バイアスの中から、面接に関係する物をご紹介致します。
ハロー効果
ハローとは太陽の周りに薄雲がかかると出来る環や、神仏に描かれる神秘的な光を意味します。
ある物事の評価が、他の全く関係のない評価にも影響を及ぼす事をいいます。
例えば外国語を必要としない企業に、語学が堪能な応募者を面接した場合、語学が優れている面から、全体的な能力が優れているように判断してしまう点です。
反対に1つ気になる点があると、全体の評価も悪く評価してしまう事もあります。
アンカリング効果
アンカリングとは船が港に止まる際に使うイカリ(アンカー)から発生した言葉です。
採用の場面では応募者の最初の印象や、強く影響のある情報に捕らわれて、その後の判断に影響がでる事を言います。
確証バイアス効果
意識をせずに自分にとって都合のいい情報や仮説に合う情報のみを受け入れ、正当化する傾向の事を言います。
確証バイアスの例で良く知られているのが、血液型の「A型は几帳面」や「O型はおおらか」といった特徴です。
実際は、血液型と性格は関係ないと言われておりますが、たまたまその人の一面だけを捉えて、おおらかだからO型だろう、几帳面だからA型などと判断してしまう事があります。
情実評価
個人的な好みや評価で判断してしまうことを言います。
見た目や雰囲気の他にも応募者の過去の経験への強い共感や、苦労話への同情など個人的な感情で判断してしまう評価の事を言います。
対比効果
気が付かないうちに前後の応募者と比較してしまう事を言います。前の応募者が優秀だったり、有名大学を出ていたりすると、次の候補者と比較してしまい、次の候補者の良い点をしっかりと見ずに判断してしまう傾向があります。
反対に、前の候補者の評価が低い場合、対比して次の候補者の評価が高くなるというケース事も考えられるでしょう。
集団面接で起こりがちな認証バイアスです。
寛大化傾向
面接官との何らかの共通点があると、応募者の評価が全体的に良くなる傾向の事を言います。
例えば出身大学が同じだったり、共通の趣味があったりすると、応募者の評価が寛大になってしまうケースです。
選考時に見極めたい活躍する求職者の特徴5つ
面接官が面接前に気をつけたい点をご紹介してきましたが、続いて選考時に面接官が見極めたい応募者の特徴5つをご紹介致します。
特徴1 コミュニケーション能力がある
コミュニケーション能力はあらゆる職種で必要とされている能力です。
近年ではジョブ型雇用など、ある程度個人が責任を持ち、自主的に業務を遂行する事が求められていますが、人と人との関わりは重要な要素です。
企業とは、経営理念に基づき利益を出すことを目的とした集団ですので、従業員同士が利益を出すために、同じ目標を持ち、目標達成に向かい、協力し合わなければなりません。
企業が求める方向性から外れていないか、顧客に求められていることとズレがないか、常に上司や同僚などとのコミュニケーション能力は欠かせません。
面接での受け答えはしっかりしているか、言われたことを理解し、的確に返答できるかを見て判断します。
特徴2 環境の変化に対応できる
経済を取り巻く環境は流動的で常に変化しています。状況に応じて柔軟に対応しなければなりません。
企業は市場の変化に対応すべく常に進化が必要で、従来の方法に捕らわれていては、ライバル企業に差が付けられてしまいます。
時代の変化に合わせて、対応できる人材なのか、新卒採用者であれば、学生時代のエピソード、中途採用者であれば前職での経験などを踏まえ、確認します。
特徴3 将来のプランニングが出来る
仕事に限った事ではないですが、物事に取り組むには、先の事を考えて準備した方が安心です。
仕事は先の事を考えプランニング出来れば、段取りを考えることもでき、スムーズに業務を行うことが出来ます。
仕事の出来る人は未来を見据えて行動できる特徴があるため、応募者が仕事でどのようなプランを考えてみるのか、聞いてみると良いでしょう。(例えば5年後にマネージャー、10年後にジェネラルマネージャーを目指すなど)
特徴4 誠実で物事に一生懸命取り組む
仕事はスピードも大切ですが、1つ1つの仕事に誠実に向き合う姿勢も大切です。例えば顧客に出す見積書に、誤字脱字があればそれだけで、この見積もりは正しいのか顧客は不安になります。
誠実な人間は失敗を人のせいにせず、自分の行動を振り返るため、同じ失敗をする確率は少なくなり、伸びていくことが期待されます。
特徴5 冷静で自己分析ができる
機械の故障など、業務上思わぬトラブルになる事もあるでしょう。そのような時は冷静な判断が求められることがあります。
また、問題が起こった時にしっかりと自己分析が出来ていると、自分で対応できるか上司に判断を委ねた方が良いのか、状況に応じた対応が可能になり、トラブルを最小限に抑えることが出来ます。
面接を採用活動で活かすために意識すべき心構え
続いて面接内容を次の採用活動や社員教育で活かすため、面接官や採用担当者が意識すべきことをまとめました。
応募者が何を見て応募したのか知っておこう。
求人を掛ける際、どの求人媒体を見たのか面接時に聞いてみましょう。
SNSや転職サイトなど、応募者がよく見る求人媒体を知っておくと、求職者が就職先を探す際、どの方法次の採用活動の参考になるでしょう。
判断基準を明確にする
ベテラン面接官でも認知バイアスにより、判断基準に多少の偏りがあることが分かりました。
面接は第一面接、第二面接など段階を踏んで行われる事もありますが、中小企業などで、あまり採用選考に時間や人を掛けられず、一回の面接で判断する事もあるでしょう。
応募者と接触する機会が少ないほど、判断を慎重にしなければなりません。
判断基準を明確にし、偏り無く選考できるようにしましょう。
面接時に使いたい応募者を見極める質問集
出身校や所持資格などは、比較的書類選考等で目に入りやすい項目です。
面接では、書類選考では見えない人間性や価値観などを、見極める必要があります。
応募者の人間性を見極めるために、面接時に使いたい質問例を集めてみました。
志望動機を教えてください
なぜ自社で働きたいと思ったのかを知ることと、自社の魅力や仕事観を判断できます。
前職ではどのような仕事していましたか
(学生なら学生時代の経験)
前職でどのような目標を立て業務を行い、どのような成果を挙げてきたのか、働き方や仕事観を確認します。
学生であれば、どのような学生生活を送ってきたのか、大学で何を学んだことや経験から学んだ事を聞くのも良いでしょう。
自分の長所や短所はなんですか?
自分の性格や能力について、客観的に見る事が出来るか確認する質問です。
応募者の性格や資質が社風とマッチするかの判断材料になります。
人生の挫折経験を教えてください
人は挫折した時に人間性が出やすくなります。人間性や価値観を確認する質問です。
当社でどのような成果を上げたいですか?
応募者が仕事観と将来のビジョンについて、どのように考えているのかを判断します。
ご応募頂いた職種やポジションで何かご質問はありますか?
自社に応募した理由や働く決意の確認になります。
また質問の有無や質問内容で、自社への興味や本気度が図れる基準にもなります。
オンライン面接で気をつけたいこと
コロナ禍では面接も対面ではなく、オンラインで行う企業も多くなりました。
オンライン面接では、対面での面接と比べ、表情や入室時の歩き方などで判断できる部分が少ないため、次の点に気をつけて行うようにしましょう。
面接者としっかり顔を合わせて話す
オンライン面接では、カメラの位置に注意が必要です。
PC画面を見ても、相手とは目は合いません。
PCやスマホの上部にあるカメラの位置を見ながら、行いましょう。
対面時と比べて表情が分かりにくいため、カメラの位置を意識して、表情はやや大げさ気味に話すようにします。
通信状況や使用ツールの状況に気をつけよう
面接時間には限りがあります。
通信状況の確認や使用ツールの方法については、事前準備をしっかりと行いましょう。
途中で面接が切れてしまったり、音声が聞こえなくなってしまったりすると、応募者も本来の自分が出しにくくなり、お互いに時間のロスになります。
話すスピードはゆっくり目でハッキリ話そう
オンライン面接では表情と同様に、対面による面接と比べて声も聞き取りにくい場合があります。
マイク状況のチェックを事前に行うとともに、話すスピードは意識してゆっくり且つハッキリと話すようにしましょう。
対面時より十分に取り応募者の緊張を和らげる時間を作ろう
オンライン面接はネット回線が繋がるとすぐに開始してしまう印象があります。
面接開始時は対面時より丁寧に時間をかけ、応募者が質問に答えやすくなるよう、緊張を和らげる時間を取るようにします。
まとめ
今回は面接時に面接官が見極めるポイントや適性のある人材の特徴などについて、ご紹介致しました。
面接に掛けられる時間は限られており、その中で複数の応募者の中から適性のある人材を選択するとても責任の重い仕事です。
採用に悩む担当者や経営者の方は面接を行う際の注意点や判断基準のポイントなどを参考にしてみてください!
【人事採用お役立ち資料のご紹介】
「面接手法の解説 その1」
面接法の種類や採用力を上げるために必要なポイントをご紹介します。