インターンシップとは、就活を控えた学生が企業で実際に職業体験する事をいいます。インターンシップを行うことで、求職者にとっては希望している企業の職場環境や業務内容を経験できますし、企業側から見ても参加者の仕事ぶりを観察できるため、導入する企業が増えています。
今回は、インターンシップの目的や準備の内容、分類など、インターンシップに関する内容について、ご紹介致します。
インターンシップを行う目的
企業がインターンシップを行う目的は大きく分けて、次の3点になります。
・優秀な人材と早期に接点を持つ
少子化により採用競争が活発化している中、より良い人材を獲得するために、企業は多種多様な採用方法を導入し、優秀な人材と出来るだけ早く接点を持ち、採用へ導きたいと考えています。
新卒採用では、就活ルールにより、正式な内定は10月1日以降と決まっていますが、実際には内々定という形で、それ以前に内定を取得している学生が少なくありません。
リクルートの就職調査機関である、就職みらい研究所から発表された、就職白書2023年の内容によりますと、就活の前倒し状態は続いており、卒業年度の前年度(大学3年生)の6月より前に就活をスタートさせている人が約4割となっています。
内定は、卒業年度の6月までに半数近くの学生が取得しており、就活期間は、約8か月~1年となっています。
2社以上内定を獲得している学生も多く、6割以上の学生が2社以上の内定を獲得しています。
このように、売り手市場が続き、就活の早期化が進む中、企業側が出来るだけ優秀な学生と早く接点を持ちたいという意識を持っているため、さらに就活の早期化が進む事が予想されます。
・ミスマッチの防止
同じ職業でも、企業風土によって、仕事の進め方や方針などに違いがあります。例えば、同じ作業でもチームワークを大切にする企業と、個々の裁量を大事にする場合などが考えられるでしょう。
仕事内容や企業の事業実績などは、会社㏋で確認出来たり、説明会で企業の様子を聞くことが出来ても、実際の会社の様子は想像する事しかできません。
インターンシップに参加し、実際に職場に出向き働く環境に身を置くことで、身をもってこの職場で働くことを体験できます。
また、企業側も、参加者の様子を見る事で、自社に合う人材か、コミュニケーション能力や人間性などを把握する事が出来ます。
入社前に、お互い“お試し”の期間を設ける事で、採用のミスマッチを減らす事が期待できます。
・社員の育成
インターンシップの期間は、企業によってさまざまですが、中長期のインターンシップでは、実際の業務に携わるケースも多く見られます。
就活生が職場環境に入り、作業を行うことで、現場の従業員や採用担当者が、入社後の作業の様子を社員が確認できたり、そのまま教育や研修内容とつながったりといった利点があります。
また、企業にとっても就活生の意見を聞くことで、外部からみた社内の様子を把握でき、異なる角度からの視点や新しいアイデアに繋がります。
就活生に業務を教える事を通じて、新入社員の社員教育の改善、教育を担当した職場環境の見直しにもつながるといった事も期待できます。
インターンシップの動向
2023年度のインターンシップの動向について、見ていきましょう。
・9割以上の学生がインターンシップ希望
株式会社マイナビの2023年のインターンシップ調査によりますと、9割以上の学生がインターンシップを希望しています。
日程としては、大学が夏休みに入る8月が最も多く、7割を超える学生が8月にインターンシップに参加しています。
卒業年度の前年度の夏休みを利用し、インターシップに参加するケースが多く、グローバル規模の事業を行っている企業では、海外留学生の参加を見越して、秋冬に開催するケースもあります。
希望していた会社のインターンシップに参加し、さらに就職意欲が湧いた、反対に理想と少し違ったため、他社も検討してみる事にしたなど、会社と直接接点を持つことで、得られることもあり、多くの学生がインターンシップを望んでいることが分かります。
・WEB開催と対面開催の両方が混在している
コロナ渦が落ち着きつつあり、インターンシップの開催方法もWEB開催と対面での開催の双方が見られます。
日数は1日から2日~5日のもの、2週間~1か月ほどのもの、1年以上の長期タイプのケースがあり、長期タイプはベンチャー企業で多く見られます。
インターシップのプログラムは各社さまざまですが、短期的なものでは仕事内容の説明やガイダンス、中長期的なものでは、グループワーク(企画立案、課題解決、プレゼンテーション、発表)などがあります。
対面の場合と、WEB開催の大きなとしては、社員との直接対面がある事や、職場見学がある点です。また現場で実務体験が出来るのも対面開催ならではでしょう。
インターシップの準備
多くの学生が参加を希望し、企業にとってもメリットが多いインターンシップですが、始めるにあたり、どのように準備を進めていけば良いのかをご紹介していきます。
・目的の確認と計画を立てる
採用活動を行うにあたり、募集を掛ける目的を再確認します。定年退職者に対する定期採用、事業拡大、新規事業など、採用活動の目的をハッキリさせます。
次に採用目的に合った母集団形成を作りやすくするために、インターンシップの計画立てます。
・日程
1Day、2日~3日、1か月、1年など、採用計画に応じて、おおよその日程を決めていきます。特に現場参加型インターンシップは、現場も巻き込みますから、繁忙期や忙しい時間帯を避ける事と、教育係の人材も確保しなければなりません。
参加人数が多ければ、複数回に分散して行う必要があります。採用計画に応じ、開催日程を調整していきます。
・プログラム内容を決める
IT関連企業で、エンジニアの戦力の卵となる人材が欲しい、営業でコミュニケーション能力の高い人材を求めるなど、採用の目的により、インターンシップで行うプログラムの内容も変わってくるでしょう。
1Dayや2日~3日の日程ですと、会社紹介やガイダンス、簡単なグループワークなどが主な内容になってくるかもしれません。
反対に、1週間~1か月ほどのプログラムであれば、グループワーク(企画立案、課題解決、プレゼンテーション、発表)などを行い、発案力や課題内容や解決力、プレゼンテーション能力などを見ていきます。
年単位の長期であれば、実際に業務に携わり、職業体験をしていく事になります。
・参加者の決定
プログラムの内容により参加人数が変わってきます。会社紹介やガイダンス程度の簡単な内容であれば、ある程度参加人数を増やし対応する事も可能です。
反対に、長期的な日程でグループワークや現場での実務を行うのであれば、参加基準を設け、参加者を絞っていく必要があるでしょう。
・担当者の選定
会社説明やガイダンスであれば、採用担当者や広報担当者などが対応しますが、グループワークや実務体験となりますと、教育担当者や現場スタッフが必要です。
参加人数や開催するプロジェクトにより、担当者の職種の人数を決定していきます。また、専門的な業務の採用に結び付けたいプロジェクトでは、短期間でも現場の担当者を入れた方が、参加者がより業務に興味を持つ事が期待できます。
・会場の確保とネット環境の確認
プログラムの内容や参加人数に応じて、会場を決定していきましょう。WEB開催の場合は、マイクや接続状況を確認しておきます。
外部の会場を借りる場合は、インターシップを開催する企業が重なりがちですので、余裕をもって会場を抑えましょう。
・実施日全体の流れ
プロジェクトの主な内容や参加人数、担当者などが決まったら、実施日の細かい流れを決めていきましょう。
例えば、1日目は会社紹介とガイダンス、主な事業などを行い、2日目は3日目からグループごとに分かれてミッションを行っていくというように、大まかな流れを決めたのち、細かい時間配分についても決定していき、人員配置も検討していきます。
特に現場実務を行うのであれば、現場への影響を考え、忙しい時間帯を避けるように、時間配分を行っていきます。
また、実務体験やワークショップで、マッチしそうな人材を見つけたら、他社への興味が移る前に早めに面接など、選考へと進めていきましょう。
インターンシップの分類
続いてインターンシップの種類について、期間別、職業別、報酬別に見ていきます。
・期間別
1Dayと呼ばれる1日だけのもの、あるいは2日~3日の短期、1週間~1か月ほどの中期、中には1年以上の長期など、企業により違いがあります。
1日や2日~3日だけの短期の場合、広い範囲の参加者を集め、多くの就活生に会社を知って貰う事を目的として、開催されることが多いです。
中期では、課題や商品開発など、与えられたテーマに沿い、結果をまとめ、報告する内容が多く見られます。テーマのまとめ方や理解力、結果の発表の仕方、他者や他のグループの発表の傾聴時の様子、発言などが適切かどうかを見ていきます。
長期は、年単位で行われるケースもあり、報酬が発生する事もあります。企業の一員として、実際に実務に携わります。書類選考や適性検査など、選考が行われる場合があり、給与が支給されます。
・分類別
企業紹介型、プロジェクト型、就業型の3種類が、インターンシップの主な内容です。
企業紹介型は、1Dayのような短い時間で、会社の事業内容や企業理念などを説明します。
日程が短いので、就業体験というより、会社紹介に近いため、他に就職説明会等を設けている企業は、インターンシップの主旨を案内時にしっかり説明しましょう。
プロジェクト型は、テーマに沿って、課題の解決案を出したり、グループワークで新規開発などについて話し合ったりします。
企業の事業内容や今後の新規事業に基づいたテーマを課題に出し、解決力や資料のまとめ方、発想力、発言力、傾聴力などを深めていく方法です。
就業型は、従業員の一員として、長期間実際の業務に携わり、職業体験をする方法です。学業に影響がない時間帯で、業務を行い、報酬が支払われることが多いです。
・報酬別
報酬が支払われるケースと、支払われないケースがあります。説明会やセミナー、プロジェクトなどですと、会社紹介や研修として考えら支払われないケースがほとんどでしょう。
反対に、実際に業務に携わったり、プロジェクトのメンバーとして、一部に参加したりするケースでは。報酬として支払われる形態となっています。
まとめ
今回は、インターンシップの主な内容や目的、および2023年の動向と、準備や分類などについて見てきました。
2023年度のインターンシップの動向としては、コロナ渦により、開催状況はWEBと対面が混在しています。また学生の9割以上が、就活前にインターンシップに参加したいと考えている結果となっています。
インターンシップは、学生にとっては、事前に職業を体験することで、入社後の環境を知ることができ、企業にとっても、学生の能力やスキルが判断できる材料になります。
導入には、参加者が職場環境や実務内容について、十分理解できるよう、計画や準備が必要です。
インターンシップの導入を検討している企業は、この記事を読んで参考にしてみて下さい。