内定者の中には、複数の企業から内定を取得している人も少なくなく、採用担当者にとって、ある程度の選考辞退や内定辞退は避けて通れない問題です。
ただし、企業が選考ごとに原因を探り、対策を取る事により、ある程度辞退が起こる頻度を減らす事は期待できます。
今回は、選考辞退が起こる原因と防止策について、ご紹介致します。
採用選考の流れは大きく分けて3つ
採用選考の流れは大きく分けて、3つの段階に分けられます。
・応募
事業計画に則り、企業が求める人物像を明確にしたのち、自社の仕事に興味を示す候補者を集めます。候補者集めには、求人広告を出し、求職者を集める方法と、ダイレクトメールなどで、自社に適性の有りそうな人材をスカウトする方法があります。
求職者を集める方法として、求人サイトや自社㏋、公式SNSで案内を出すなどの方法があり、スカウトとしては、イベントを行う、スカウトサイトの登録者へ直接スカウトメールを送るなどがあるでしょう。
応募したものの、担当者からの連絡を待つ間興味が無くなったり、他社への就職が決まったりすると、選考に移ることなく、辞退となります。
・選考
選考は、集まった候補者の中から、適正度が高く、企業理念を深く理解しつつ、必要なスキルを持っている、または将来が期待できる人材を選ぶ工程です。
選考方法は、大きく分けて、書類選考と面接とに分けられます。複数の選考を行い、候補者の中からふるい分けをしていきます。選考途中で、候補者が会社と合わないと感じたり、担当者の対応に不満があったりすると、辞退となることがあります。
・内定
さまざまな工程を経て、候補者の中から、内定者を決定します。新卒採用の場合、就活ルールにより、正式な内定者の決定は、卒業年度の前年度の10月1日以降となっています。そのため、それ以前の内定は、内々定と言う形で、内定者へ連絡をしています。
内々定を決めたのち、入社までの間に内定者が、志望度の高い企業から内定を受けたり、選考時に自社とミスマッチを感じたり、企業に対して何らかの不満や不安を感じていると内定後でも辞退となることがあります。
辞退が起こりやすい時期とは
採用工程の中で、もっとも辞退が起こりやすいのは、応募時から選考までの期間ではないでしょうか。
なぜこの時期に辞退が多いのかを考えますと、他社からのスカウト来やすい事や、先に応募した企業の選考が通過したり、内定が出たりして、他社へ興味が移りやすいためです。
ただし企業にとって、ダメージが大きいのが、内定後の辞退でしょう。内定者が決定したのちだと、候補者集めからやり直さなければなりません。
全体を通して、辞退は発生しますが、起こりやすい時期と起こる原因にも注意しましょう。
選考辞退が起こる原因
選考中の辞退には、原因があります。ただし、候補者側の原因の場合もあり、辞退をゼロにすることは不可能でしょう。
まったく辞退を無くすことは難しくても、減らす事は可能です。続いては、辞退となっている原因をご紹介します。
応募後
応募から選考となるまでの間の原因について、下記の通りまとめました。
・応募後に自分の希望と異なると感じた
応募時の案内を見て応募したが、その後面接までの担当者のやり取りの中で自分の求める条件と違った、会社の雰囲気などが合わないと感じたりすると、辞退となります。
・スカウトメールの内容が志望動機と異なった
スカウトのメールが来て、複数回担当者と連絡を取り合ったが、自分が希望する条件が異なったりすると、選考へ進む前に、内定辞退となる場合があります。
例えば、業務内容や職種などの希望条件はマッチしていたが、リモート不可や転勤ありなど、細かな条件が志望動機と異なるため、辞退となる場合もあります。
・口コミの評判が良くなかった
求人が出ていたので応募した、もしくはスカウトが来たので、興味を持ったが、選考へ進む前に求人サイト等に載っていた口コミを確認したところ、“残業が多い”、“人間関係が良くない”など、マイナスの評価が目立った場合など、応募後に選考へ進む前に、応募者が辞退してしまう事があります。
特定の求人サイトからの辞退者が多い、選考辞退の増加傾向が続く場合、口コミ等の評判を確認しましょう。
・志望度の高い企業から内定・選考通過の案内が来た
就職活動や転職活動をされている人は、複数の企業へ同時期に応募しているケースが多くあります。
選考が同時に進んでいるケースもあり、場合によっては、志望度の高い企業から先に面接等の連絡が来れば、他の企業は辞退する可能性が高まります。
・面接日程が合わなかった
学生の場合、テストや他社との面接と日程が被ってしまった、転職層では、現職の仕事の日程調整が上手くいかなかったなど、何らかの理由があり、面接日に日程調整が出来ず、辞退せざるを得ない場合もあります。
面接日程が少ない場合や、面接時間が平日日中のみであったりすると、面接日程がどうしても取れず、その後の選考を諦めざるを得ないこともあるでしょう。
・求人内容をしっかり理解していなかった
志望度のあまり高くない企業の場合、興味が薄いため、求職者が求人情報をしっかり把握しきれていない場合があります。
そのため、何となくコンタクトを取った後に、自分にマッチしないという事に気が付き、辞退となることがあります。
・質問時の担当者の印象が悪かった
電話応対した社員や採用担当者の対応が横柄だったり、メールの返信が遅い、印象が悪かったりすると、不信感を感じてしまい、辞退へと繋がってしまいます。
・在職中の企業から引き留められる、スケジュール管理が困難だった
転職活動を行っている社員は、現職で勤務中の方もいらっしゃるでしょう。現職で働きながら転職活動を行うには、経済的な不安が少ない分、大変な労力と決断力を要します。
特に転職潜在層では、現職が多忙なケースも多く、応募したものの、スケジュール管理が出来ず、転職活動を断念せざるを得ない事もあります。
また、転職潜在層は現職で会社の中堅的な立場となっているケースも多く、会社から退職を引き留められる可能性も否定できません。
このように、転職を考えていても、現職との関係で、転職活動を途中でストップする事もある事を覚えておきましょう。
・家族からの反対にあった
何らかの理由で転職をしたいと考えていても、転職前より給与が下がる、勤務地が遠くなるなど、条件が悪くなる場合、本人が転職に前向きでも、家族から反対に合い、転職活動を断念せざるを得ない事もあるでしょう。
また、応募した企業について、家族があまり良くない情報を耳にしており、家族からの反対にあり、選考を辞退する可能性もあります。
面接後
続いて面接後に選考辞退となる理由について、見て行きます。
・面接担当者の対応が悪かった
面接時、面接官は候補者が会社条件とふさわしいか判断しますが、同時に面接官も候補者から見られている事を忘れてはなりません。
面接官が横柄な態度を取ったり、時間を守らなかったりすると、候補者から見れば会社への印象は非常に悪くなり、選考辞退へと繋がってしまいます。
・面接時に自分の希望と異なると感じた
面接時に担当者と業務内容、勤務地、転勤の有無など、条件について話し合いますが、その際、条件が合わない場合、自分の希望と異なると選考辞退となる場合があります。
・社内の雰囲気に不安を感じた
面接で会社を訪れた際、社内の様子がある程度把握できる事も多いのではないでしょうか。その際、社内環境が良くない、社員の雰囲気が暗いなど、社内の雰囲気に不安を感じると、面接後に辞退してしまう可能性が高まります。
・内定後
会社としては、最も避けたい事態ですが、内定後の辞退が起こる理由を見てきましょう。
・志望度の高い企業から内定の連絡があった
求職者は、複数の企業へ同時に応募している可能性があり、内定後に志望道の高い企業からも内定がもらえると、志望度の低い会社の内定を辞退する事があります。
・内定後の担当者からのフォローがなかった
内定通知後、入社日までの期間が空いており、その間会社からの連絡が無いと、内定者が不安に感じてしまう事はよくあるので、注意が必要です。
・他の内定者との関係に不安を感じた
内定後の研修や親睦会で、他の内定者を初めて顔を合わせる事もあるでしょう。その際、他の内定者と合わないと感じたり、不安を感じてしたりしてしまう事もあるでしょう。その不安が強く内定辞退となってしまう事もあります。
選考辞退を防ぐための対策
選考辞退となる理由について、紹介してまいりました。会社としては、対策が難しい理由もありますが、対策可能な理由については、対策を練り、選考辞退を出来るだけ防ぎましょう。
・求人案内に動機付け要因も記載する
求職者は、求人票を見る際、給与や福利厚生など、条件だけを見ている訳ではありません。その仕事に興味があるか、達成感ややりがいを感じられるかという事も、大切な要素です。
業務を行う事で、何が得られ、自身の成長に繋がるかという事を明確にすることで、求職者の理解が深まりやすくなるでしょう。
・求人案内を正確に記載しよう
求人広告の場合、スペースに限りがありますが、出来るだけ、求職者に分かりやすく記入するようにしましょう。
リモートの可否、転勤の有無、教育研修制度なども大切な項目です。可能な限り記載してきましょう。
・選考の流れを明記する
1回だけだと思っていた面接が2回あった、面接だけだと思っていたけど、その前に適性テストを実施されたなど、選考の流れが応募者の想定と違っていると、不信感を頂いてしまいがちです。
選考時に応募者が戸惑わないよう、選考で必要な書類、行われるテスト、面接の回数、内定後の研修までを、求人案内にはしっかり記載しておきましょう。
・選考回数を簡素する
候補者を多角的に判断したいと、あれこれ選考種類や回数を増やしてしまうと、会社側の準備も大変になりますし、候補者の負担も大きくなります。
選考回数は、出来る限り簡潔にし、オンライン面接を導入する、採用管理ソフトを利用するなど、選考業務を簡素化、効率化し、その他の候補者の分析やフォロー対策などに時間を費やしていきましょう。
・スピーディに対応する
候補者は、複数の企業へ応募していたり、スカウト受けていたりするかもしれません。選考に時間を掛け過ぎていると、会社に不信感を感じたり、他社へ興味が移ったりしまいがちです。
候補者からの相談や質問は24時間以内には回答し、不信感を抱かせないようにする、選考結果の合否は出来るだけ早く(遅くとも1週間以内)に対応するようにしましょう。
・面接前に候補者とコンタクトを取る
候補者が多忙な場合、うっかり面接日を忘れたり、日程を勘違いしたりしている可能性もあります。
また、応募した日から面接日まで間が空く場合、モチベーションが下がったり、他社へ興味が移ったりしてしまう事も考えられます。面接日前に一度メールや電話を行うと辞退を減らす事が出来るでしょう。
・選考を通じて、誠実な対応を心がける
選考だけではなく、採用活動全体に言える事ですが、不採用にとなった人は、将来的に会社の取引先、顧客となりうる人かもしれません。
メール対応が遅かったり、電話対応が高圧的に対応したりすると、会社への不信感へと繋がります。応募者は、会社に魅力を感じ、共に働きたいと応募してきてくれた人です。全体を通して誠実な対応を心がけましょう。
・魅力ある会社作りを心がける
候補者が、この会社で働いてみたいと考える理由はなんでしょうか。給与や勤務地、福利厚生という目に見えて分かりやすい要因(衛生要因)とは別に、業務でやりがいや成長を感じる事が出来る要因(動機付け要因)があるかという事も、応募するかどうかを決める上で、大きな理由の一つです。
候補者に、この会社で働いてみたい、この業務に携わってみたいと感じてもらえる、魅力ある会社作りを行っていく事も、長い目で見たら選考辞退を防ぐ要因と言えるでしょう。
・定期的に情報発信を行う
魅力ある会社でも、周囲に認知されていなければ、求職者には届きません。公式㏋やイベント、SNSを利用し、自社の情報や魅力について、定期的に発信を行っていきましょう。
まとめ
今回は、選考辞退の原因やその防止策について、ご紹介してきました。売り手市場と呼ばれる中、候補者は複数の企業から内定を得ている事が多く、選考辞退はある程度避けられない状況です。
ただし、選考辞退の原因を知り、対策を取ることで、選考辞退を減らす事は可能です。選考辞退に悩む企業は、この記事を読んで参考にしてみて下さい。