採用選考は、限られた期間で自社にマッチする人材かを決定する必要があり、適正検査を導入している企業も少なくありません。
適性検査には、書類選考や面接とは別の形で、応募者の能力や性格を判断できる材料として、採用の現場で活用されていますが、適正検査を導入することで、採用活動にどのような効果があるのでしょうか。
ここでは、適性検査の基礎知識をはじめ、導入するメリットやポイントについてご紹介します。
適性検査とは
適性検査とは、基礎能力や性格、適性などを測定し、分析することで、業務に適正な能力や思考パターンを持ち合わせているかを判断するためのテストです。
適性検査では、書類選考や面接では見えにくい、人材の思考パターンや資質などを客観的に測ることができ、採用のミスマッチを防ぐために用いられます。
適性検査というとリクルートが開発したSPIが有名ですが、適性検査の歴史は1960年代まで遡ります。それ以前は、採用活動は指定した学校の学生を採用する指定校制がとられていました。
1963年に、リクルートが東京大学の心理学者を中心に採用テストの開発が進められ、本格的に導入され始めたのが1970年代、その後も、時代の変化に合わせて改良されながら、現在まで引き継がれています。
近年では、メンタル不調者が増えていることから、入社前にメンタルチェックやストレス耐性をチェックする項目もあります。
適性検査は多くの種類がありますが、主に基礎能力検査、性格検査の2つ要素について測定さえます。
・基礎能力検査
職業を行う上で必要な知識や技術を習得する能力を測定します。作業の正確性、理解能力、論理的思考力、発想力、一般常識、基礎学力などを判断します。
・性格検査
思考パターンや協調性、責任感、物事の取り組み方、慎重性や衝動性、チームワーク力などを測定します。企業理念や業務に適合かどうかを判断します。
そのほか、ストレス耐性では、ストレスとなるような出来事に対する感知能力や回避能力、処理能力や転換能力などを測定します。
適性検査のメリット
適性検査では、次のようなメリットがあります。
・人の評価の客観性
適性検査には、複数の質問があり、解答内容を元に能力や性格などを分析します。
分析には、過去大勢の人のパターンから分析されるため、結果からおおよその能力や性格について客観的な評価ができるようになっています。
・多角的な評価
選考は、履歴書や経歴書などの書類選考と、複数回の面接で行われるのが一般的です。そこに、書類選考が加わることで、書類選考や面接ではわからない思考パターンや発想力、理解能力などが分析され、より多くの角度から応募者を判断することが出来ます。
・評価の標準化
人の評価を一つのフレームに当てはめるのは、難しいですが、適性検査は質問に対する回答を客観的に評価出来るので、評価のバラつきをなくし、応募者の評価を標準化することが可能になります。
・応募者の資質やパターン傾向の分析
人事評価が標準化されると、応募者の採用基準にバラツキがなくなり、資質や傾向パターンをつかむことが出来るようになり、採用のミスマッチが少なくなります。
・評価の公平性
適用検査の結果は、客観的なデータとして利用できるので、評価の標準化につながり、採用基準が公平になります。
特に面接は、ベテラン面接官でも心理的バイアスに掛かりやすいので、選考に適性検査を入れることで、評価の公平性が強化されるでしょう。
・採用業務の負担軽減
採用業務は、応募者への連絡や日程調整など多岐に渡ります。ただし応募者の中には、複数の企業に応募している可能性もあり、スピーディな選考が欠かせません。
人の採用は、機密情報を扱うことと、応募者の対応を短期間で行わなければならず、担当者にとっては、慎重さが求められる負担の大きい業務です。適性検査を選考基準に取り入れることで、選考が標準化されるため、採用業務の負担が少なくなります。
適性検査の形式
適性検査には、各社から様々な種類が出ていますが、大きく分けて4つの形式に分かれています。それぞれの形式の概要についてまとめました。
・筆記形式
筆記形式は、試験会場で問題用紙と解答用紙を配布し、解答用紙に書いて提出する形式のテストです。
マークシートで解答する場合と、記入して解答する検査があります。採点や検査を販売・提供する企業が行う場合と、購入した企業が自ら行う場合があります。販売会社で採点を行うと、採用担当者の負担軽減と、より多くのデータから分析が行えるので、分析結果の精密さが増します。
自社で行う場合、費用が掛からない点と、すみやかに結果が分かるメリットがあります。
・WEB形式型
WEB形式は、PCやスマホを利用し、WEB上で検査を受ける適性検査です。場所や時間を問わず受検できることが最大のメリットでしょう。
企業からすれば、試験会場を用意する必要がないため、費用や手間が掛かりませんし、受検者の交通費や移動時間が掛からないので、リラックスした場所で手軽に検査を受けることが可能です。
ただし、検査中に監督者がいないため、不正が起こりやすいというデメリットがあります。
・テストセンター形式
検査を提供する会社の用意した会場で設置されたPCを用い、テストを受ける形式です。テスト会場には、試験監督もいるため、不正防止にも役立ちます。
テストを業者に委託する形となり、企業の採用担当者の負担は軽減されますが、費用が掛かります。
適性検査によっては、一部をWEB上で行い、残りを試験会場へ出向き受検することもあります。
・インハウス形式
試験会場へ足を運び、試験会場に設置されているPCを使って受ける形式です。企業内PCや指定された会場を使い試験を行います。
検査結果がその日のうちに出るため、スピーディな対応が可能ですが、試験会場や検査を受ける人数分のPCを用意する必要があります。
採用状況ごとに適した適性検査を選択しよう
新卒採用だけではなく、中途採用者にも適性検査を導入する企業は多くみられます。新卒採用と中途採用では、採用する目的や求められる能力も異なるため、採用状況ごとに適した検査を選択することが重要です。
・新卒採用
新卒採用では、適性検査を見るのは、社会人として基本的な能力や性質を持ち合わせているかという最低ラインを見極めるために実施されることが多いです。
基礎的な能力や一般常識、理解力などのほか、思考パターンや性格などもともと持ち合わせている人間性や能力を判断できる適性検査が向いているでしょう。
大手企業や人気企業では、ある程度選定人数を絞るために、参考として利用されることもあります。
・中途採用
中途採用者の場合、募集する職種によって、求められる部分は異なりますが、一般的には、社会的な基礎知識や能力のほか、責任能力や発想力や理解力などが問われます。
そのほか、精密さが求められる業種では解答の正確性や慎重な性格、開発業種では発想力が豊かかさかなど、自社にマッチする思考パターンや、傾向があるかなどの判断に用いられるでしょう。
適性検査を導入するポイント
適性検査を提供している企業は数多くあります。適用検査を導入するには、どのようなポイントがあるのかを見ていきます。
・受検方法が実地可能であること
適性検査には、大きく分けてWEB試験と筆記試験に分かれます。WEB試験の中には、インハウス形式のように自社のPCが必要となるケースもあります。
また筆記形式の場合、試験会場の確保が必要です。
また、業者に委託して行う場合は、費用負担が大きくなる場合もありますので、適性検査の受検方法が自社で対応可能かどうかの確認が必要です。
・信頼できる検査であること
さまざまな適用検査がありますが、信頼できる検査機関から提供されている試験を選択しましょう。信頼できる検査かどうかは、検査方法が科学的根拠に基づくものか、標準化されているかで判断します。
また、監修機関のチェックや整合性調査などを、定期的に行っているかも注意が必要です。
価格は各社により千差万別です。費用が高い場合、すべて業者にお任せできる分、スピーディに結果が出たり、担当者の負担が減ったりするメリットはありますが、大切なのは検査結果が信頼できる内容かどうかです。
適用検査を行うには、ある程度費用や工数が掛かるため、複数の企業を検討し、信頼できる会社かどうか、しっかり検討しましょう。
・検査人数が多いこと
適用検査は、検査した人数の偏差値から、受検者の傾向を判断します。そのため、人数が多いほうが、データとして信ぴょう性が高くなるため、検査人数が多い検査を選択します。
・導入実績がしっかりしていること
適用検査は、1970年代頃から普及してきた検査です。2022年現在、多くの企業から提供されていますが、検査の根拠や監査機関と共に、導入実績がしっかりと公表されている企業の検査を選びしょう。
また、過去に自社の業種に、導入事例があるかどうかも重要な要素です。
・自社にマッチする検査であること
どんなにコストや実績のある適用検査でも、自社が求める結果が得られないのであれば意味がありません。
適用検査で得られる結果は、自社が求める内容になっているか、確認しておきましょう。
適性検査の種類
適用検査の代表的な種類をご紹介します。(金額は2022年11月現在 各社㏋調べ)
・SPI3
リクルートが提供し、40年の歴史ある適性検査です。2021年12月時点で215万人の受検実績があります。
テストは、大卒向け、高卒向け、中途採用者向けなど、目的や応募者に応じて受検することも可能で、内容は基礎学力検査と性格検査となっています。
受検方法は、PCを用いる場合とマークシート形式の試験があります。PCの場合は、リクルート運営の会場で受検する場合、応募企業で受検する場合、好きな場所と時間で受信する場合があり、マークシート形式の場合は、応募企業にて受検します。
初期費用は掛からず、受検者一人から実施可能で、例えばテストセンターであれば5500円で受検することが出来ます。
・玉手箱Ⅲ
日本エス・エイチ・エルが販売している総合適性検査です。同社は、日本国内向けの人材アセスメントサービスを展開しています。
検査には、知的能力とパーソナリティの面から測定します。診断結果は、ペーパーでIMAGES検査6尺度のフォーマットか、「ヴァイタリティ」「チームワーク」などの9特性での報告となります。
年間利用料が120万円程で、受験料も別途必要になります。
料金は、個別診断測定が2420円/人で、数量的評価(名簿+集計一覧)が18,249円/30名までとなっています。
・内田クレペリン検査
日本で90年に渡り、利用されてきた心理検査です。産業や教育、医療の現場で広く使われてきており、アジアを中心に世界で利用されています。
WEB試験ではなく、筆記のみの形式のみで、単純な一桁の足し算を前半15分、途中休憩をはさみながら後半15分の合計30分かけて行います。
検査で、能力面の特徴と性格・行動面の特徴が判定できます。
適性検査だけに囚われすぎないことも重要
適用検査は、客観的に受検者の性格や基礎的な能力を測定するものですが、適用検査の結果は、あくまでも受検者のデータの中で、どのような傾向があるかを判断するものであるので、適用検査だけで合否を判断するのは危険です。
書類選考や面接に加え、あくまでの応募者の判断基準の一つとして捉えましょう。
まとめ
今回は採用業務で取り入れられている適性検査の基礎知識と、導入のメリットやポイントについてご紹介してきました。
適性検査を行うことで、受検者の基礎的な能力や性格について客観的に測定することが可能であり、書類選考や面接と共に、応募者の判断材料となります。
各社からさまざまな、適性検査が提供されているので、自社に合うものを選ぶと良いでしょう。
適性検査を導入したい、もしくは、導入しているが上手く活用できずに悩んでいる企業では、こちらの記事を参考にしてみてください。