人事採用業務は、共に働く仲間の採用や教育を担う、重要な業務です。売り手市場や人手不足が続き、採用市場は自社に合う人材を獲得するために、年々厳しい状況が続いています。
求職者が応募する際に悩むのと同様、人事採用担当者も日々悩みを抱えながら、業務に携わっているといっても過言ではりません。
では、人の採用や教育に関わる人事採用担当者が抱える悩みとは、どのような内容なのでしょうか。
今回は、人事採用担当者が抱える代表的な悩み11選をご紹介致します。
人事採用の流れ
人事採用業務には、新卒採用と中途採用があります。新卒採用の場合、目標を立て、担当者を選び、長期的なスケジュールを組み計画的に進めていきます。中途採用では、人手不足や新規事業など、何らかの理由で、人を採用する必要が出てきた場合、採用人数や期間、募集職種などを定め、計画に沿って進めていくのが一般的です。
・新卒採用の場合
新卒採用の場合、卒業年度の1年前の夏(大学生であれば3年生)を対象としたインターンシップの受け入れが始まり、広報解禁日の3月1日以降になると、求人案内の開始と学生からのエントリーが開始されます。
それ以降は応募者の対応、面接日の日程調整や内定者決定、内定者フォローと、採用まで継続的に業務が続きます。
・中途採用の場合
中途採用の場合、募集から採用まで、平均2か月ほどの期間で行われると言われています。
希望職種の求人を出し、書類選考や面接を経て内定となります。選考は新卒採用と比較すると、簡素化して行われることがほとんどです。
採用状況による悩み9選
採用業務は、求人案内をはじめ、応募者情報管理、面接等の日程調整と面接の実施、合否連絡から内定者フォローなど、多岐に渡ります。
さらに採用者がしっかりと実力を発揮し、会社に貢献できるよう教育や研修にも力を入れなければなりません。
作業工程が多く、人に関する仕事のため、細かい配慮が必要で、責任も重大です。そのため、採用担当者はさまざまな悩みを抱えています。
①新入社員採用担当者が抱える悩み
新入社員の採用の場合、採用人数や求める人材について、将来を見据えた目標を立て、計画に沿って進めていきます。
採用までの工程が長期に渡るため、工程ごとに悩みが発生します。新入社員採用時に抱えやすい悩みについて5選、ご紹介します。
・学生の認知度が低い
日本の企業は9割以上が中小企業であり、ほとんどの企業は大企業や人気企業と比べると、学生の認知度は低く、就職活動で初めて知ったという企業も少なくないでしょう。
そのため、合同説明会を出しても、学生が来ない、説明会を開いても参加した学生に熱意が感じられない、反応が薄いといった事が悩みとして上げられます。
新規事業や会社規模が小さい企業では、早い段階で積極的に学生と接点を持ち、会社の認知度を上げて、学生に興味を持ってもらう必要があります。
・応募者を見極めるのが難しい
募集を出し、応募者が来ても応募者を見極めるのは簡単ではありません。ほとんどの学生は、適性検査や面接対策をして来ます。
学生の場合、職務経験がないため、学生時代の過ごし方や専攻学部など、人間性などで判断しなければなりません。限られた選考の回数や時間で大勢の応募者の中から適性のある人物を選ぶ必要があるため、採用担当者はプレッシャーを抱えています。
・現場からクレームが出る
候補者は、いくつかの選考を経て、適性があると判断されると採用となります。ところが採用した人物が現場で思うような成果が出せないと、採用した部署に責任があると、現場からクレームが来ることがあります。
たとえば、人と接するのが好き・得意と言うことで、営業職に配属されたが、実際には顧客との交渉がうまく出来ない、人と話をするのは好きだが接客は苦手だった、正確さが求められる事務職で、ケアレスミスが目立つといったことが上げられるでしょう。
・面接辞退者や内定辞退者が出る
大学生の内定者のうち、約3割が内定辞退すると言われているのを、ご存じでしょうか。長期的に計画を立て、費用と工数を掛けて採用活動を行っても、面接辞退、内定辞退者が発生するのも、人事採用担当者を悩ませる事の一つです。
近年は、売り手市場が続いていること、オンライン面接の導入で、気軽に企業にエントリーがしやすくなった事から、応募しやすい傾向があります。
採用競争が激しくなる中、内定の早期化が進んでいますが、内定後も学生がより良い企業を求め、採用活動を続ける傾向があり、内定辞退者が出る状況になっています。
・早期退職者が出る
内定辞退者と同様、時間と工数を掛けて入社しても、早期で退職してしまうケースも多くあります。
厚生労働省が発表した令和3年度調査では、の新卒採用のうち、3年以内に会社を退職する人は、大卒者で約3割、高卒で約4割です。
教育や研修を行い育ててきた新卒社員が退職してしまうのは、採用担当者にとってもつらい悩みでしょう。
②中途採用担当者が抱える悩み
中途採用の場合、企業が求めるのは即戦力です。中途採用は人手不足や新規事業のため、すぐに会社で活躍できる、ある程度社会経験を積んでいる人を求めています。
そのため、募集する職種が限定的であったり、急を要したりするため、次のような悩みが発生しやすくなっています。
・求人が集まらない
自社に合った求人方法を検討する時間が無く、何となく求人募集を行ったが、思ったより人が集まらず、中途採用業務が長期化してしまったという事も、多いのではないでしょうか。
中途採用を行うのは、新卒採用で定員に満たなかった、退職者が発生した、新規事業の開始、課題強化のためなど多岐に渡ります。
新規事業開始や企業の課題強化のためなど、目的がハッキリしている場合は、ある程度準備を整えた上で採用業務を行えるでしょう。
ただし、急な退職者や新卒採用の定員割れや内定辞退などの理由で、人を集めることが目的となってしまい、何となく求人広告や求人業務を行った結果、希望する人が集まらないという事になります。
また、業界全体で求人が集まりにくい場合は、手広く求人を出しても人が集まりにくく、人手不足で工程を見直して時間も無いため、改善も進まず人事担当者を悩ませています。
・業務量が多い
中途採用で業務量が増えるのは、二つの理由が考えらえます。
まず一つ目ですが、中途採用では、新卒採用のように専用のチームや部署を作るのではなく、他の業務を並行して採用業務に当たらないとならない場合があります。特に人員が限られる中小企業では、この傾向が強いでしょう。
二つ目は、新入社員を教育する人手や費用を掛けられず、即戦力となる、社会経験のある優秀な社員を求め、通年採用を行っているケースです。
この場合、ダイレクトリクルーティングやリファラル採用など、会社の方から優秀な人材を探しています。常に優秀な人材と接触し、面接や採用業務を行っている状態であるため、候補者情報の管理や、面接日の日程調整などを行わなければならず、新規採用のように工程に波が無く、恒常的に、慌ただしい状態が続くことになります。
・求めるスキルと給与体系が釣り合っているのか不安になる
募集する職種に対して、同業種と比較して、給与が低い、業務内容と給与額がつり合わないという事があれば、求める人材を確保するのは困難になり、採用活動が長期化してしまいます。
給与体系は、人事採用担当者に決定権がある訳ではありません。ですが、採用で希望する職種の給与体系に問題がある場合、経営者や現場サイドを含め、市場の状況を照らし合わせながら、見直しをしていく必要があります。
・現場から苦情がくる
上記の内容と関係する場合もありますが、採用した人が現場で思うような成果が出せないと、現場から採用した部署に責任があると、苦情が来る場合があります。
特に中小企業の中途採用では、即戦力となりうる人を求めるため、すぐに成果が見られないと、面接対応や書類選考など、選考過程に原因があると責められるケースもあり、採用担当者を悩ませることがあります。
採用場面で起こる悩み2選
次に採用場面で起こる悩みについて、集めてみました。
①面接時の悩み
面接時の悩みとして多いのが、採用基準が明確ではないため、判断に迷ったり、面接官によってバラツキが出てしまったりする事です。
また、面接を行うには、応募者のどういう点を見れば良いのか、ある程度トレーニングが必要でしょう。資格や経験は履歴書などの書類で確認出来ますが、人間性や性格は、面接でなければ判断できません。
面接官がしっかりと判断できるよう、マニュアルや判断基準を定め、バラつきが出ないよう訓練が必要です。
②内定後や入社後の悩み
新卒採用の場合、内定から入社まで、半年ほど間が空きます。その間企業からの連絡が少なければ、学生は不安に感じてしまいます。
内定辞退を防ぐため、内定者フォローが重要視されていますが、学生のニーズに合ったものか、不安を感じる採用担当者もいるでしょう。
同様に、中小企業では、入社後の教育や研修方法が分からない、研修や教育に掛けられる人員がいないというのも、人事採用担当者が抱えやすい悩みの一つです。
人事採用担当者の悩みを解決するには
これまで、人事採用担当者が抱える悩みについて、ご紹介してきました。では、こうした悩みを解決するために、出来る方法を見てみましょう。
①データを残し現場や管理職を交えてしっかり話し合う
採用後、採用した人が実際に働くのは現場です。採用した人の早期離職がたびたび起こる場合、もしかすると、現場と採用部署との間に、求める人材のズレがあるのかもしれません。採用者の成果についてデータを残し、現場や管理職を交えて話し合いが必要です。
②エージェントや採用ツールなどを利用する
採用方法や教育方法が自社で解決するのは、難しい場合、エージェントを利用し、ノウハウを教えてもらうのも一つの方法です。
また応募者の管理や面接の日程調整は、採用ツールなどを利用し、管理する方法もあります。
③求人方法を見直す
採用業務において、どのように母集団形成するのかは、大きなポイントです。自社にマッチし優秀な人材を効率よく集められれば、その後の採用業務がスムーズに進みます。
自社にマッチした母集団を形成するには、課題を見つけ数ある候補者集めの中から、自社に合う求人方法を見つける事です。
複数人を集めたい場合は、求人サイトや広告を利用する、専門性の高い企業であれば、専用の求人サイトやリファラル採用など、新規企業や認知度の低い企業であれば、スカウトやミートアップ採用などがあげられるでしょう。
④研修方法や教育方法を見直す
入社後に研修や教育を行っている企業は多いですが、中途採用ではあまり、研修を行っていない企業も多いのではないでしょうか。
会社の発展・向上のためには、新入社員、中途採用社員に関わらず、常に教育や研修は必要です。研修やセミナーなどは、自社で行うには手が足りない、ノウハウが無い場合には、社員教育を行っている採用コンサルタントなどを利用してみましょう。
まとめ
今回は、人事採用担当者が抱える代表的な悩みについて、ご紹介してきました。人事は人の採用や教育に携わる大切な業務で、責任も重い仕事です。
少子高齢化で、採用競争が激しくなる中、人事採用担当者は、より効率的で常に結果の出る活動が求められます。
悩みがある場合、担当者だけで抱えることなく、関係部署や現場、管理職などを含め、会社全体で十分な話し合いを行い、取り組んでいく必要があります。場合によっては外部の力を借りることで、悩みが解決できる場合もあるでしょう。
人事採用に悩みを抱える企業は、この記事を読んで参考にしてみて下さい。