今後の成長が見込まれる若手社員や新入社員が、入社から間もない段階で離職してしまうことは、企業にとって大きな損失です。
採用活動には、費用や工数が掛かっており、早期離職者が発生すると、再び採用活動が必要となる事もあり、防ぎたい問題でしょう。
今回は、なぜ若手社員や新入社員が早い段階で退職してしまうのか、その理由と、早期離職を防ぐべく、効果的な対策ついてご紹介します。
若手社員・新入社員の離職状況
厚生労働省では、令和2年度の新入社員の3年以内離職率について公表しました。その内容によりますと、3年以内の離職率は、高卒で36.9%、短大等卒で41.4%、大卒で31.2%という結果でした。(平成30年3月卒業者が3年以内に離職した率)
つづいて、事業規模に見てみましょう。高卒・大卒共に、事業規模が小さいほど、離職率が高い傾向となっており、従業員数5人未満の企業では、高卒で61.9%、大卒で56.3%です。対して従業員数1000人以上の大企業では、高卒で25.6%、大卒で24.7%です。
若手社員・新入社員が早期離職する理由
早期離職とは、一般的に、新入社員や若手社員が、入社後3年以内に離職する事を言います。早期離職の主な理由を見てきましょう。
離職理由の主な項目
若手社員や新入社員が、早期に離職してしまう理由を下記にまとめました。
- 入社前の期待と入社後のギャップ
- 時間外労働や休日出勤など勤務時間への不満
- 職場の人間関係での悩み
- 職場環境が良くないと感じる
- 業務内容のミスマッチ
- 賃金が安い
- 企業の将来性への不安
- キャリアアップが見込めない
・入社前の期待と入社後のギャップ
新入社員では、不安を抱えつつもこれからの社会人生活に期待を込めて入社してきます。ところが、入社前に説明会や面接官から聞いていた話と大きなギャップを感じてしまうと、こんなはずではなかったと、不安を抱えてしまう事になります。
・時間外労働や休日出勤など勤務時間への不満
若手社員や新入社員の世代は、いわゆるZ世代と言われ、自由な時間をとても大切にする価値観を持っています。
そのため、残業や休日出勤などが多く、自分の時間が取れないと、リモート可やフルフレックス有など、自由度の高い企業へと転職を考えてしまうようになります。
・職場の人間関係での悩み
職場では、学生時代と違い、上司や先輩など年の離れた人たちとも、コミュニケーションを取っていかなければなりません。
新入社員や若手社員が、社会人として、こうした職場の人達と頑張って馴染もうと思っていても、慣れない業務や環境では悩む事も多いでしょう。
そのような中、先輩が相談に乗ってくれない、上司から指示やフィードバックが少ないといった職場だと、職場に行くのが辛くなり、“転職”の二文字が頭をよぎる可能性が高くなります。
・職場環境が良くないと感じる
正社員であれば職場にいる時間は、活動時間において多くの割合を占めます。そのため、職場環境が快適かどうかは、重要な問題でしょう。
空調の利きや湿度、作業場所のし易さや、スペースが十分にあるか等も、作業効率に大きく関わってきます。
その他職場の雰囲気などを含め、職場環境が良くないと感じると、疲れやストレスを感じ、退職を考える結果となってしまいます。
・業務内容のミスマッチ
希望した職種だったけど、実際に業務に携わってみたら、想像していた内容と違った、または希望した部署へ配属されなかった場合なども、業務へのやる気を無くし、会社への興味を失う原因となる事があります。
・賃金が安い
採用時、会社は従業員に対し、賃金について明示する決まりとなっています。ところが、入社前に聞いていた賃金と違いがあった(みなし残業代込み)、諸手当が多く、基本給が少ないなど、従業員が想定していた賃金より安いと感じる場合など、将来に備え、転職を視野に入れる結果なる場合があるでしょう。
ちなみに、新入社員の初任給は大卒228,5000円、高卒181,2000円でした。(厚生労働省HP 令和4年賃金構造基本統計より)
地域による違いもありますが、早期退職者が多い、退職者から賃金についての不満が出ている場合、他業種や地域の賃金状況について、一度確認してみても良いでしょう。
・企業の将来性への不安
仕事を行う最大の目的は、収入を得て生活をするためです。採用時には業績が良かった企業であっても、今後もその状況がずっと続くとは限りません。経済には波があり、価値観の変化や世界経済の影響を受け、流れが大きく変わってしまう事もあります。
ベンチャー企業や新規事業では、こうした状況の変化で、企業の将来性が大きく変わってしまう事があります。入社時は、好待遇であっても、業績が急激に悪化すれば、会社の将来性に不安を感じ、転職を考えるでしょう。
・キャリアアップが見込めない
企業に入り向上したい、成長したいと考える若手社員や新入社員は、この企業にいても成長出来ない、もしくはキャリアアップが頭打ちになりそうだと感じると、さらなる成長を求め、次のステップへ移りたいと考えるようになります。
離職理由には内的要因と外的要因がある
若手社員・新入社員が早期に離職する理由には、大きく分けて内的理由と外的理由があります。
内的理由とは、ある程度コントロール可能な要因であり、対策が取りやすい理由です。
外的要因とは、企業外で起こる要因です。具体的には、下記の4つの要因があると言われており、社内の力だけでは、対処が難しい要因です。
- 政治的要因:法改正や税金などに関する要因
- 社会的要因:市場状況や価値観の変化
- 経済的要因:景気や消費動向、為替など
- 技術的要因:デジタル技術の発達など
早期離職を防ぐ方法としては、外的要因を視野に入れつつ、主に内的要因を防ぐ対策を取って行きましょう。
若手社員や新入社員の早期退職で起こる会社への影響3点
若手社員や新入社員が早期退職すると、会社へどのような影響があるのか考えてみましょう。
・採用コストの損失
新入社員の採用には、多くの工数とコストを掛けています。採用サイトへの登録や、大学や専門学校などへ出向き、就職説明会の開催を行うなど、時間と費用を掛けて、新入社員を採用します。
これだけ、企業が新入社員に時間と工数を掛けているのは、自社の未来を担う人材として、期待を込めているためです。すなわち未来への投資とも言えるでしょう。
教育や研修などを重ね、時間と費用を掛けて、新入社員を育てても、ある程度育った段階で、退職してしまうと、二重での損失が生じます。
・再び採用活動するための費用と工数
・教育や研修に掛けた人件費や工数
そのため、出来るだけ離職を回避していく必要があります。
・マイナスイメージの流布
近年はSNSの活用で、多くの情報が瞬時に配信されています。また採用サイトなどでも、元社員の勤務先についての書き込みを、閲覧したこともあるでしょう。
就活生や求職者は、勤務先の情報を求めており、就活中にこうした情報を見る機会も多いでしょう。
人間関係が良くない、雰囲気が悪いなど、マイナスの口コミが多ければ、企業のイメージは悪くなり、今後の採用活動へ影響してしまう可能性があります。
・社員のモチベーションの低下
時間を掛けて指導してきた新入社員が、次々に退職をしてしまうと、他の社員への影響も心配しなければなりません。
これまで育ててきた後輩や部下たちが辞めてしまうと、指導者のモチベーションが下がってしまったり、他の従業員の業務が増えたりするなどの影響があるでしょう。
さらに、新しい従業員が入ってきても、また辞めてしまうのではないかと不安になり、社内の雰囲気が悪くなる可能性があります。
社内の雰囲気が悪化すると、生産性の低下にもつながり、会社としては大きな問題です。
若手社員・新入社員の早期退職を防ぐ対策5点
若手社員・新入社員の早期退職を防ぐ対策を5点ご紹介します。
・若い世代の価値観を知る
まずは、就活生や若い世代の考え方や特徴を理解しましょう。
就活生や新入社員は、いわゆるZ世代と呼ばれており、デジタルネイティブ、多様性を受け入れる、プライベート重視という価値観を持つと言われています。
そのため、長時間労働や休日を拘束される事に不満を感じます。企業は、こうした価値観を理解し、働き方の見直し、業務量、効率化などを全体で取り組んで行きましょう。
・動機付け要因と衛生要因の両方を満たす
新入社員は、多くの企業から、自社を選び入社しています。求職者が企業を選ぶ理由として、は“動機づけ要因”と“衛生要因”の二つがあると言われています。
動機付け要因とは、仕事への達成感や承認されることなど、仕事への“やりがい”に関係し、衛生要因とは、賃金や福利厚生、チーム内の人間関係など、仕事への“満足度”に関係します。
動機付け要因は、無くても仕事に対する不満は出にくいですが、あれば従業員の生産性の向上へ直結します。例えば、仕事の達成感があれば、次も頑張ろうと考えるでしょう。
衛生要因は、足りなければ、不満に直結する要素です。例えば給与が低ければ、いくらやりがいや達成感がある業務でも、不満が溜まり転職を考えるでしょう。かといって、賃金や待遇は、いくら良くしても、満足できるのはほんの一瞬です。企業の経営状況や競合他社や近隣企業と比較し、一定のラインを決めておきましょう。
動機付け要因と衛生要因は、片方のみ達成していても、不満が溜まりやすいと考えられているため、定期的なヒアリングを行い、バランスを見ながら、両方満たして行くようにしましょう。
・インターンシップなど企業体験できる場を設ける
早期離職は、入社後3年以内の離職と言われていますが、1年以内に離職する割合が最も多くなっています。
すなわち、入社して早い段階でギャップや、何らかの不満があって離職していると考えられます。
つまり、入社前の理解が不足していたり、何らかの勘違いが生じたりしているため、ギャップや不満が出ている可能性があります。
賃金や福利厚生なども重要な要素ですが、インターンシップや職場見学などで、就活生が実際に業務を体験する、業務風景を見学する場を設け、就活生や求職者が理解を深められるようにしましょう。
・面談など新入社員や若手社員が意見を言える場を設ける
新入社員や若手社員は、社会人経験が浅く、新しい環境に不満や不安を抱えながら、勤務している人も多いでしょう。
仕事で困っている事はないか、悩みは無いか、定期的に面談を設け、話を聞くようにしましょう。
まとめ
今回は、若手や新人が早期離職する理由と、その対策についてご紹介してきました。
早期離職は、就職活動の追加が必要になる、社員のモチベーションが下がるなど、企業にとって損失が大きい問題です。
早期離職となる根本的な原因を探り、取り除いていく事が大切です。
早期離職に悩む企業は、この記事を参考にしてみて下さい。