ポテンシャル採用とは?新卒や中途採用との違いや実施のポイントを徹底解説

ポテンシャル(potential)とは、直訳すると“潜在能力”や“発展性”といった意味があり、ビジネスだけではなく、スポーツや機械の性能などでも使われる言葉です。

近年、採用の場面でも、スキルや経験ではなく、潜在能力や今後の可能性を重視し、採用を行うポテンシャル採用と言う言葉が聞かれるようになりました。

今回は、ポテンシャル採用の基本的な内容や、メリットデメリット、導入する上でのポイントなどをご紹介致します。

ポテンシャル採用とは

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ポテンシャル採用とは、資格や経験などのスキルではなく、その人が持つ性格や考え方、潜在能力を元に、成長の伸びしろや、将来の可能性を重視し、評価を行う採用活動の事を言います。

これまでの実務経験や取得資格、学生時代の体験より、潜在能力や将来性に重きを置いて採用の判断を行います。

将来性や成長を見込んだ採用基準となるため、大半の企業が対象を30歳以下の若年層としています。

求職者から見れば、未経験分野でも職種でも採用に繋がる可能性があり、キャリアアップのチャンスが広がります。

ポテンシャル採用と新卒採用やキャリア採用との違い

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ポテンシャル採用は、新卒採用やキャリア採用と、どのような違いがあるのでしょうか。

新卒採用との違い

潜在的な能力を元に、将来性や発展を見込み合否を判断するので、新卒採用とポテンシャル採用は似ている部分があります。

ただし、新卒採用と大きく違う点は、新卒採用は、学生を対象とし、就活ルールに乗っ取り、広報解禁や選考、内定などを行っていくのに対し、ポテンシャル採用は、通年採用がほとんどで、年齢は30歳以下の若年層という条件がある他は、経験やスキルなどは問われないといった違いがあります。

キャリア採用との違い

キャリア採用とポテンシャル採用は、通年採用と言う点では共通ですが、ポテンシャル採用が、今後の成長や発展性で判断されるのに対し、キャリア採用では、即戦力が求められるため応募時時点でのスキルや能力が重要視されます。

ポテンシャル採用が注目される背景

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ポテンシャル採用が注目されるようになった背景には、次のような理由が考えられます。

・少子化による新卒採用の激化

総務省の㏋では、令和4年版の生産人口年齢の減少について発表しています。その内容によりますと、生産人口年齢と呼ばれる15歳~64歳までの人口が1995年をピークに、減少が続いており、2050年には2021年と比較して29.2%減少する予想されています。

少子化が続き、各企業が若い世代を獲得するため、採用競争が激しくなり、各企業では、採用活動を多様化し、新卒採用の獲得に向け動いています。

・グローバル化による応募窓口の拡大化

新卒採用は、就活ルールがあり、そのルールに沿って進めなければなりません。しかし海外留学組や海外大学の卒業生など、日本の就活ルールでは、新卒採用の時期に間に合わない層がいます。

せっかくの海外でさまざまな経験を積んだ人材が、採用時期がずれてしまったというだけで、卒業後の進路が宙ぶらりんの状態であるのは、日本経済においてとてももったいない事になります。

グローバル化が進む世界では、このように枠に当てはまらない層にも窓口を広げて、世界で活躍できる人材を、積極的に採用しようという動きが出てくるようになりました。

ポテンシャル採用のメリット

ポテンシャル採用は、将来性を見据え採用する方法です。職業経験を問われない事も多く、第二新卒や海外大学卒業者などでも、チャレンジが可能です。

ポテンシャル採用の主なメリットについて見ていきましょう。

・研修時間短縮や費用の削減

ポテンシャル採用者は、第二新卒者など、ある程度社会人経験をしている場合が多いため、一からビジネスマナーや知識などを教える必要がなく、新卒採用と比べて、研修期間を短くすることが可能です。

時間が短くて済むということは、その分、研修に掛かる費用も少なくて済むため、効率的です。

・将来を見据えた採用が出来る

ポテンシャル採用で求められるのは、潜在的な能力や将来の成長の可能性です。バックグランドが有りながら柔軟性を持つ若年層は、企業の将来を担う大切な存在です。

現在のスキルではなく、これからの伸びしろや将来性を見て、今後の企業の未来を考えた、採用活動を行う事が出来ます

・潜在能力を持つ幅広い人材を確保できる

キャリア採用では、即戦力が求められるため、採用時にこれまでのスキルで評価されます。ポテンシャル採用は、潜在能力や将来性で判断されるため、意欲ややる気があえば、未経験職種でもチャレンジする事が可能です。

そのため、前職とは違う職種の人が、業種や企業に興味を持ち、応募してくる見込みもあり、幅広い人材の獲得が期待できます。

ポテンシャル採用のデメリット

続いてポテンシャル採用のデメリットを見ていきましょう。

・求める人物像とズレがある

ポテンシャル採用は、“将来への伸びしろ”を期待して採用するため、実際に業務について見たら、実は適性度が低かったという事があります。

キャリア採用では、即戦力を求めるため、スキルや経験などを見て判断するのに対し、ポテンシャル採用では、選考時に経験は問わず、やる気や将来性見て評価するので、現場で求められる適性とズレが生じてしまう事が原因です。

採用後にミスマッチが判明すると、職場の士気が下がる、社員の早期退職など思わぬトラブルに繋がる可能性もあります。

面接時に、企業理念や基本的なビジネススキルや最低限の適性度なども、参考に見ておきましょう。

・キャリア採用に比べ研修に時間がかかる

キャリア採用の場合、希望する職種にマッチしたスキルを持つ人材を、採用する事が多いため、必要なビジネススキルは身についていると考えられるので、研修を行う企業は少ないでしょう。

ところが、ポテンシャル採用の場合は、社会人経験の少ない若年層が採用のターゲットとなっていることから、新入社員と同じとはいかずとも、一定時間の研修を必要とする場合があります。

・研修コストがかかる場合がある

上記で説明したとおり、社会人経験の少ないポテンシャル採用では、一定期間の研修や講習等が必要となるケースが多いですが、その分研修を行うための準備や人員が必要になるでしょう。

教育を社員が行うなら、その分人件費が掛かりますし、講師を呼べば講習料を支払わなければなりません。また資料を用意する場合は、作成時間や配布資料代などが掛かってきます。

このように、新入社員と比較すれば、コストも時間も抑えられるとはいえ、キャリア採用と比べれば研修や教育が必要な場面が出てきてしまいます。

ポテンシャル採用の場合は、ある程度の研修や教育が必要だと考えておきましょう。

ポテンシャル層が仕事で求めていること

大手求人サイトエン・ジャパンが運営する人事のミカタというサイト内で、20代、30代の転職理由についての調査結果を上げています。

その結果によりますと、転職理由では、半数近くの人(48%)が給与や待遇を上げていますが、次に多いのが、仕事へのやりがい(43%)や将来性に対する不安(30%)です。

上記の事から20代~30代までの世代は、給与や待遇などを安定した生活を望みつつ、スキルアップややりがいを求めていることが推測できるでしょう。

また仕事より自分や家族との時間を大切にする傾向があり、ポテンシャル層を採用する時は、ワークライフバランスを大切にする傾向があることを理解して、採用活動を行いましょう。

ポテンシャル採用を行う際のポイント

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ポテンシャル採用を行う際のポイントについて、3つご紹介致します。

・採用基準の明確化

ポテンシャル採用は、キャリア採用と違い、希望する職種のスキルや資格などが明確にある訳ではありません。

そのため、採用基準をしっかり定め、選考時に社内でブレが生じないよう明確にしておく必要があります。

例えばコミュニケーション能力や一人で物事をやり抜く力量は、どの職種でも求められる項目でしょう。その他では、几帳面さや体力、問題解決能力などがあげられます。

ポテンシャル採用は、潜在能力や将来性で判断するため、職歴があるなら前職の勤務内容、無い場合は、学生時代のバイト経験や部活など、これまでの生活から判断していきましょう。

・採用情報は出来るだけ詳細に出す

平成19年の雇用対策法にほり、募集要項を出す際、基本的に年齢制限を設ける事は禁止されています。

ただしいくつか例外があり、長期勤続によるキャリア形成を目的とし、若年層(35歳以下)を期間の定めのない雇用については、認められております。

募集要項を出す場合、法に触れないよう、社内風景や企業風土、業務内容や勤務地や転勤の有無、リモートワークについてなど、出来るだけ詳細に出し、入社後に会社と採用者との間にミスマッチが生じないよう、採用情報については出来るだけ詳しく出すようにしましょう。

・採用後のフォローアップ体制

新しい環境に入っていく場合、ほとんどの人は緊張や不安を抱えています。特に若年層は社会人経験が浅い、もしくは未経験であることから、採用後には、フォローアップをしっかり行いましょう。

研修や勉強会をはじめ、交流会や困った事があった場合の相談場所など、ポテンシャル採用枠で採用された社員が、安心して業務に取り組めるよう、採用後のフォローアップ体制をしっかり整えておく必要があります。

また、採用の連絡から、入社まで間が空く場合、メールや電話などを入れ、入社前の不安や疑問も取り除いておくようにしましょう。

ポテンシャル採用を導入している企業例

ポテンシャル採用を導入している企業をご紹介致します。

・ヤフー株式会社

ヤフー株式会社の採用は、キャリア採用とポテンシャル採用を行っています。ポテンシャル採用では、応募時に新卒、既卒、就業者のうち、18歳以上30歳未満を対象としています。

業務内容は、エンジニア職、デザイナー職、ビジネス職があり、通年採用で4月、10月を入社時期としています。

・サイボウズ株式会社

グループウェアの開発、運用、販売を手掛けている企業です。IT業界未経験者でも業務内容や企業に興味を持つ人を、ポテンシャル枠で募集しています。

職種は、WEBコンテンツライターやテクニカルクリエイターなどの技術職だけではなく、カスタマーマーケティングなどのビジネス職も募集しています。

まとめ

今回は、ポテンシャル採用の内容や、注目されるようになった背景、メリット、デメリットについてご紹介して来ました。

若年層の採用競争が激しくなる中、新卒採用やキャリア採用とは違い“伸びしろ”や“潜在能力”を重視し、将来に渡り活躍が期待できる社員を獲得する事を目的としています。

ポテンシャル採用について、悩んでいる企業はこの記事を参考にしてみて下さい。